バナナは猫が食べても大丈夫な果物です。豊富な栄養が含まれていて猫の健康に役立ちますが、食べ過ぎや与え方には十分な注意が必要です。この記事では、猫にバナナを与えても大丈夫であることを説明すると共に、バナナの効果やメリット、与え方などについても解説します。
この記事の目次
目次を閉じる猫はバナナを食べても大丈夫かを解説
記事モデル:心彩(みあ)
バナナを食べている時に飼っている猫が一緒に食べたがったという経験をもっている方は多いことでしょう。飼い主が食べているものに興味を示す猫は多いですからバナナもそのうちの一つ、ということができるのかもしれません。
しかし、猫が興味をもったからといってバナナをそのまま与えてもよいのでしょうか。バナナは猫には毒、ともいわれており心配になる方もいると思います。
実は猫にバナナを与えても大丈夫なのです。バナナには良質な栄養成分が含まれていて、猫にも良いとされています。
ただし注意点も多く与え方によっては猫の健康を害することがあります。
そこでこの記事では、「猫とバナナの関係」について、
- 食べ過ぎには注意
- 与えるメリット
- 与える際の注意点
- すべての猫がバナナ好きではない
食べ過ぎなければバナナを食べても大丈夫
食べ過ぎなければ猫がバナナを食べても問題ありません。バナナには猫に中毒を起こさせる成分は含まれておらず、反対に栄養価が豊富で猫の健康維持にも良いといわれているからです。
しかし、後述するように体の小さな猫には栄養価が高過ぎて食べ過ぎるとかえって健康を損うおそれもあります。
大切なのは与える量に注意することです。
ここではバナナと猫の健康との関係についてくわしく解説していきます。
バナナは栄養豊富だが敢えて与える必要はない
バナナは栄養が豊富に含まれている食材ですが、必ずしも猫に与えなければならないものではありません。
バナナは、ビタミンやミネラル、マグネシウム、食物繊維といった栄養素をたくさん含んでいます。これらの栄養素は体を動かすためのエネルギー源になったり、体温、血圧を調整したりする効果をもっているのです。
しかし、これらの栄養素は猫が日常的に食べているキャットフードにすべて含まれています。また猫には栄養バランスのうえからみてキャットフード以外に与えなければならない食材はありません。
猫は元来が肉食の猫は人間と違って、肉以外に他の食材を食べることで不足する栄養を補わなくてもよい動物なのです。
その点を考慮することなくバナナを与えてしまうとかえって後述するような健康上のリスクを被るおそれがあります。
敢えて猫にバナナを与える必要はないのです。
バナナは猫にとって高カロリー
バナナは猫にとってはカロリーが高い食べ物です。
バナナ自体のカロリーは1本で約84kcalといわれており、栄養面も考えると人間からしてみればおすすめの食べ物になります。しかし、体の小さな猫にとってはカロリーが高すぎてしまいます。
ちなみに体重を5kgとした成猫の1日の必要カロリーは約275kcal。バナナ1本で1/3ものカロリーを摂取してしまうこととなるのです。バナナが猫にとっていかに高カロリーな食べ物であるかがわかると思います。このため常時与えて良いものではありません。
高カロリーのバナナを日常的に多く与えてしまうと肥満の原因となるばかりではなく、糖尿病や膀胱炎、尿道結石といった病気、さらに下痢を引き起こすリスクが高くなります。
与える場合には量に注意するようにしましょう。
猫がバナナを食べるメリットとは?
猫がバナナを食べるメリットは次の3点です。
- エネルギーや水分の補給ができる
- 便通に効果的
- 余計な塩分が排出できる
メリット①:エネルギーや水分の補給ができる
メリット②:便通に効果的
バナナは猫の便通改善に効果的な食べ物です。
猫はあまり水分を摂らないので便秘になる個体が多いといわれています。この点、バナナには水分とともに食物繊維が含まれており便秘の改善効果が期待できるとされているのです。
食物繊維には水分を吸収することで便を柔らかくする効果があります。また腸内のぜん動運動を活発化させて有害物質を排出する働きももっています。いわば腸内の環境を整えてくれるのです。
なお食物繊維には水に溶ける水溶性と溶けない不溶性の2種類があり、バナナには両方が含まれています。便通に良いのは不溶性食物繊維ですが、水溶性食物繊維にはコレステロールを低下させたり血糖値の上昇を抑える効果があります。
ちなみにバナナに含まれる食物繊維は100gあたり1,1g。レタスと同じです。
メリット③:余計な塩分が排出できる
バナナには余分な塩分を排出する効果があります。塩分の摂り過ぎは高血圧の原因となるので猫の健康管理にはおすすめです。
バナナに含まれるカリウムには塩分を排出する働きがあり、それが血圧の上昇を抑えてくれるのです。この他にもカリウムには心臓や筋肉の機能を調節したりむくみを予防する働きがあります。
このように猫の健康を守るためぜひとも摂りたいカリウムですが摂り過ぎると高カリウム血症と呼ばれる病気の原因ともなります。
高カリウム血症とは心臓の機能を狂わせ不整脈などの症状を引き起こし、最悪の場合には死にいたる可能性のある恐ろしい病気です。
この章の冒頭でも書きましたが、バナナを与える際には適量を守るようにしましょう。
猫へのバナナの与え方
猫にバナナを与える際には注意点があります。バナナは猫の健康維持に効果がある食べ物ですが、与え方を間違えると場合によっては命にもかかわる重篤な症状を引き起こす可能性があるからです。
基本的には少量をおやつとして与えるのがよいとされています。また、日常的に与えるのは推奨されていません。
そのうえでここでは、バナナのメリットを享受できるようにするための与え方を次の3点にわけて解説していきます。
- 皮を剥いた常温のものを与える
- 少ない量を細かくして与える
- アレルギーや病気に注意する
①皮を剥いた常温のものを与える
バナナは必ず皮を剥いた常温のものを与えるようにしましょう。
バナナの皮は硬くて消化も悪くそのまま食べると喉や腸を詰まらせるおそれがあります。腸に詰まると腸閉塞を引き起こす原因ともなります。
またバナナの皮には長期保存のための殺虫剤や農薬がかけられています。猫がバナナの皮をなめることでそれらの薬が体内に入ってしまい、とても危険です。
剥いた皮はすぐに処分して、猫があやまって口にしないように注意しましょう。
常温のバナナを与えるのが良いとされているのは猫の消化器を守るためです。猫の胃や腸に冷たい刺激を与えるのは良いことではありません。冷たいものは猫の消化器に悪い影響を与え、食欲不振や下痢の原因となってしまうからです。
②少量を細かくして与える(すりつぶす)
猫にバナナを与える際にはそのままではなく、少しの量を細かくしてあげることが必要です。
かたまりのまま与えると喉に詰まらせることがあります。
また、猫にバナナを多く与えることはカロリーオーバーによる肥満や糖尿病といった病気の原因となります。さらに、バナナには豊富な栄養素が含まれていますが、タンパク質がありません。
タンパク質には筋肉だけではなく、臓器、皮膚、被毛さらには血管といった体を構成する部分を作る大切な役割があります。健康維持には必須の栄養素です。
しかし、バナナを与えすぎてしまうとそれだけで猫が満足してしまい、大切なタンパク質を摂るための食事をしなくなるおそれがあるのです。
それを防ぐため、たとえば1cm程度の輪切りにするとかすりつぶすとかして与えるようにしましょう。
③アレルギーや病気に注意する
猫にバナナを与える際にはアレルギーや病気に注意することが大切です。
これまで解説してきたようにバナナには猫にとってメリットとなる栄養素が含まれています。その一方で、与え方によってはアレルギーや病気を引き起こすリスクもある食べ物です。
そこで与える際には猫の様子をよく観察することが大切といわれています。具体的には少量のバナナを与えたうえで次の点を注意するようにしましょう。
- 下痢の有無
- 痒みの有無
- 嘔吐の有無
- 湿疹の有無
- 目の充血の有無
参考:バナナチップは添加物に注意
バナナチップやバナナジュースなどバナナを使った加工品はいくつもあります。いずれも人間にとっては問題ありませんが、猫にとっては注意しなければならない食品です。
特にバナナチップは添加物に注意しなければなりません。バナナチップには味を良くするために砂糖や油、香料といった添加物を使っています。これらの添加物は猫の肥満や糖尿病の原因となるからです。
また、市販されている人間用のバナナジュースには糖分が多く含まれており猫に与えるのは厳禁です。
バナナジュースについては、バナナそのものをミキサーでつぶして与える分には問題ないといわれています。しかしそこに牛乳を加えてはいけません。牛乳には乳糖といわれる成分が含まれ、これを分解するにはラクターゼという物質が必要です。
猫の体内にはこのラクターゼがなく、乳糖を分解することができません。結果、猫は牛乳を飲むことで下痢や嘔吐といった症状を引き起こすリスクを抱えてしまうこととなるのです。
ただし、猫用のフードとして売られている加工品であれば与えても問題ありません。その場合には商品の包装に記載されている注意書きに注意するようにしましょう。
参考:猫がバナナの皮に驚く(怖がる)理由
猫はバナナの皮を見ると驚きます。実際にネット上にはバナナの皮を見て驚いて飛び上がる猫の動画が公開されて話題になりました。
猫は驚くと瞳孔が開いたり、ダッシュして逃げたりするなどの行動をとることも知られていますが、バナナの皮を見ることでも飛び上がって驚くのです。
その理由についてくわしいことはわかっていません。しかし、猫を驚かせる行為に警鐘を鳴らす専門家は多く、決しておすすめできるものではありません。
猫が驚くのはバナナの皮が蛇に似ているから
猫はバナナの皮が蛇に似ているので驚くとされています。
ここで注目すべきは猫はきゅうりを見るとバナナの皮同様に飛び上がって驚くという事実。ネット上にはきゅうりを見た猫が驚くほど高く飛び上がる姿が動画として投稿されています。
専門家は、猫はきゅうりの形を蛇と関連づけているのではないかとの仮説をたてています。自然界では猫は蛇の捕食の対象です。
通常、地面にきゅうりが転がっていることを猫が見ることはありません。蛇への本能的な恐怖をもつ猫がそれをみて勘違いし驚くのではないか、というのです。
また、猫にはある物体に驚くと速やかにその場所から立ち去り、離れたところから再度その物体(この場合はきゅうり)を確認する習性があるといわれています。驚いて飛び上がるのはこの習性によるものなのです。
バナナの皮やバナナ本体に対して猫が驚き、高く飛び上がるのもこれと同じ理屈になります。
驚かせる行為は猫にとってストレスでしかない
猫がバナナの皮に驚く様子を見て面白く思う人は多いようです。なかには敢えて驚かせてみようとする人もいます。悪意はないのでしょうが、猫にしてみればストレスをかきたてられるだけです。
猫はバナナの皮に驚くのではありません。それを見慣れない不審な物体と感じるためです。猫は警戒心が強く見慣れない物体を突然見ることでストレスに襲われるのです。
その結果飛び上がったり、ものを壊したり、ケガをしたりといった行動をとります。さらには飼い主との間の信頼関係が失われる可能性もあります。
動物行動学者のジル・ゴールドマンは猫をこわがらせることを目的とした行動はとるべきではない、としています。
意図的に猫を驚かせる行為は厳禁と考えるのが良いでしょう。
バナナの匂いが嫌いな猫もいる
バナナの匂いが嫌いな猫もいます。
バナナは健康に良いからといってむやみに与える必要はありません。正確な理由はわかりませんが、バナナの匂いを嫌う猫がいるので嫌がる様子があれば無理に与えなくても良いのです。嫌がるのを無理に与えることで猫にストレスをかけてしまうことにもなります。
ただし猫によって差があるので様子を見ながら与えるようにしましょう。
なお、バナナ以外にも猫が嫌がる匂いを出す食べ物があります。代表的なものは柑橘系の果物です。柑橘系果物の酸っぱい匂いが腐った肉の匂いに似ているというのがその理由になります。
その他にメントール、アロマ、ハーブ、コーヒーなどの匂いも猫は嫌がります。さらに個体差はありますが男性の汗の匂いを嫌う猫もいるようです。
猫はバナナを食べても大丈夫?のまとめ
猫とバナナとの関係について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回のこの記事のポイントは、
- 猫はバナナを食べても大丈夫
- 必要な栄養はキャットフードで摂れるので敢えて与える必要はない
- バナナには健康上のメリットがあるが与える量と方法に注意
- 故意に猫を驚かせることはしない