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改正動物愛護法が成立し、犬や猫にマイクロチップを埋め込むことが義務化されました。マイクロチップとは一体どのようなものなのでしょう?この記事では、マイクロチップのメリットとデメリットやペットに埋め込まれるマイクロチップや埋め込み方、健康への影響等を解説します。

記事監修者「森下 浩志」

監修者森下 浩志
フィナンシャルプランナー

早稲田大学基幹理工部出身。すべてのペットのお金と健康にまつわる問題を解決したい、という強い思いからMOFFMEを立ち上げ。ファイナンシャルプランナー、損害保険(ペット保険を含む)の公的資格取得。獣医師団体などと連携をして、ペットのWEB健康診断ツールの開発も行う。

この記事の目次

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装着が義務付けられたマイクロチップってどんな物?健康への影響は?

記事モデル:ふく&ゆめ


2019年6月に「犬猫のマイクロチップ義務化」が衆参両院で可決されましたね。


施行日はハッキリ決まっていませんが、近いうちに義務化される日がやってくるものと思われます。


犬猫の飼い主さんは「マイクロチップって何?」という基礎から知らないといけないので大変ですね。


そこで今回のこの記事では、犬猫のマイクロチップについて、

  • 犬猫に埋め込むマイクロチップとはどんなものか?
  • マイクロチップのメリット・デメリットは?
  • そもそも何故埋め込まないといけないの?
  • マイクロチップに関する疑問

以上のことを中心に説明します。


この記事を読んでいただけたら、マイクロチップに関することが良く分かりますのでぜひ最後までご覧ください。

マイクロチップとはどんなもの?そのメリットとデメリットも解説!

マイクロチップとは一体どんなものなのでしょうか?


そんな人工的なものを体に埋め込んで大丈夫なのでしょうか?


また、どうしてマイクロチップを埋め込んだほうが良いのでしょうか?


マイクロチップの検討の前に、基本的なことを知っておきましょう。

マイクロチップとは?

         
マイクロチップとは、長さ10㎜✕直径2㎜ほどの円柱形の電子タグです。

中にICとアンテナが入っていて、リーダーという機器で飼い主の住所や連絡先の情報を読み取ります。

電源は必要なく30年ほどの耐久性があり、一度埋め込めば生涯に渡って有効です。

動物園や水族館では飼育されている動物にはほとんどマイクロチップが埋め込まれています。

しかし、一般家庭で飼われている犬猫にはマイクロチップが埋め込まれている個体は多くありません。

2011年の環境省の調査ではこのような数字が発表されています。
犬猫の割合
迷子札や連絡先入り首輪を装着85.4%
マイクロチップを埋め込んでいる7.8%
と大きく差が開いています。

この数字を見るとまだまだ一般的とは言えない状況です。

しかし、マイクロチップのID登録頭数の数字では以下のように推移しています。
マイクロチップ登録頭数
2010年450,400件
2016年1,352,000件
これからますます増加していくものと見込まれています。

マイクロチップのメリット

東日本大震災ではたくさんの犬猫が飼い主と離れ離れになりましたが、その際に保護された犬猫の引き取り率のデータが発表されています。

飼い主が判明した率
迷子札・鑑札が認識できなかった0.5%0%
迷子札・鑑札が認識できた100%100%

震災などがあると、迷子札が破損したり首輪が切れたり、汚れて判別不明になることがあります。


大震災の時、そのせいで飼い主が見つからなかった犬猫が多かったのです。


その点マイクロチップは体内に埋め込まれているので破損や判別不明になることはありません。


そんな震災時の教訓が発端となりマイクロチップの重要性が見直されました。


マイクロチップのメリットは震災時だけではありません。


交通事故など、日常で起こる事故でもすばやい飼い主の発見に繋がります。


マイクロチップを埋め込んでいない場合の飼い主発見率は以下の通りです。

飼い主に引き渡された率28%0.3%

事故は特に首輪や迷子札は破損しやすくなりますので、やはりマイクロチップの埋め込みのほうが確かではあります。


それともうひとつ忘れてはならないメリットは、ペット保険の割引サービスが受けられる点です。


義務化が施行されるとそのサービスも終わるかも知れませんが、現時点ではまだ割引は適用されます。

マイクロチップのデメリット

       

マイクロチップのデメリットは非常に少ないです。


体に埋め込んで害にならないか心配する声もありますが、体に安全な素材を使っているので、副作用などの心配はありませんし報告もありません。


マイクロチップから出る電磁波を気にされる方もいますが、犬猫や人間に影響するような強い電磁波は発生していません。


MRIで検査をすると若干画像が乱れる場合もありますが、診断に影響を与えるほどではありません。


マイクロチップも少しずつ普及して、改良を重ねて優秀なものとなっています。


デメリットを心配する必要がありません。

何故ペットにマイクロチップを埋め込むのか?

        

そもそも、なぜ犬猫にマイクロチップを埋め込まないといけないのでしょう?


迷子になった時の引き取り手を早く探すため?


「迷子なんて、一生に何回もないことで痛い思いしてマイクロチップを埋め込むのは可哀想…」と思う方も多いかも知れません。


しかし実は、迷子になった時だけの義務化ではないのです。


深い理由がありますので、マイクロチップが義務化される背景を知っておきましょう。

改正動物愛護法について

冒頭でもお話したように、2019年6月に動物愛護法改正が可決され、マイクロチップの義務化がスタートする運びとなりました。

もちろん迷子になった犬猫の一刻も早い帰宅や保護のためもあるのですが、以下の観点からの改正でもあります。
  • 虐待や異常繁殖を防ぐため
  • 捨てられる犬猫を減少させるため
  • 殺処分を減少させるため
マイクロチップは、主に業者の暴走を止めるための施策でもあります。

個人でもらい受けたり拾ったりした場合は、マイクロチップ埋め込みは努力義務となりますが、動物取扱業者(ペットショップ、ブリーダー)は義務化になります。

ですので、動物取扱業者から購入した犬猫は体内に必ずマイクロチップが埋め込まれることになります。

同時に殺処分受け入れの制限を行っていく予定となっていますので、異常繁殖で売れ残った犬猫を殺処分しにくくなります。

そうなると、売れ残らないように繁殖にセーブがかかります。

このような流れで、不幸な末路をたどる犬猫を減らしていく目的の施策でもあるのです。

迷子犬の捜索に

先にも少し触れたように、迷子の犬猫の発見を早める効果がマイクロチップにはありますが、マイクロチップはGPSではないので位置情報は得られません。

リーダーという機器はAmazonなどで6,000円~7,000円ほどで売られていますが、それを使ってマイクロチップを読んでも識別番号しか表示されません。

この識別番号は個人情報の観点から、簡単には読み解けないようになっています。

個人情報には、動物病院動物愛護センター保健所などの専門施設でしかアクセスできない仕組みとなっています。

要するに「保護されて然るべき施設に連れて行ってもらうまで、マイクロチップは意味をなさない」と言うことになります。

ここは難しいところです。

個人ですでに飼っている犬猫は努力義務で、埋め込まない選択もできるので判断が難しくなります。

しかし、一刻も早く飼い主の元に帰る安心をひとつでも増やしておくのは大切かと思われます。

マイクロチップに関する疑問点を徹底解説!

次にマイクロチップに関する様々な疑問にお答えしていきます。
  • 迷子札じゃダメなの?
  • 飼い主が変わったり引っ越しの際はマイクロチップはどうするの?
  • マイクロチップを体内に埋め込んで危険じゃないの?
  • マイクロチップを入れるのにかかる費用は?
  • マイクロチップはスマホで位置がわかる?
  • マイクロチップは絶対壊れないの?
どれも気になる疑問です。

マイクロチップを、自分の犬猫に埋め込むかどうかを決める判断材料にしてください。

迷子札じゃダメなの?

マイクロチップは読み取る機械が必要ですし、然るべき施設に行かないと情報がわかりませんので発見から帰宅まで時間がかかります。

その点、迷子札なら発見と同時に連絡が来て帰宅が早くなるように思いますが、必ずしもそうとは限りません。

迷子札や首輪の刻印などは破損したり、識別不能になる可能性があります。

実際、震災時にも迷子札や首輪の刻印らしきものを付けたペットはたくさんいました。

しかし、割れたりちぎれたり傷だらけになって判別できないものが多かったそうです。

それに、特に猫は首輪をつけると、どこかに引っ掛けて事故の元になりやすいため、普段から首輪をつけてない飼い主さんも多いでしょう。

首輪をつけないと迷子札も刻印も付ける場所がありませんので意味を成しません。

その点ではマイクロチップは優秀です。

埋め込まれている首のあたりに怪我をしない限り、マイクロチップがなくなったり破損することは稀です。

飼い主が変わったり引っ越しの際はどうするの?

        
飼い主の変更や引っ越しがあった時は、マイクロチップの情報が変わってきますので変更手続きをしないといけません。

しかし手続きはいたって簡単です。

マイクロチップを埋め込んだ時と登録が完了した時に「飼い主控え」「登録完了通知ハガキ」が飼い主の手元に渡されます。

それを利用して、以下の手順で変更手続きを行います。
  1. 変更手続きは上記2つの書類のいずれかをコピー
  2. 飼い主名や現住所などの情報を二重線で消す
  3. 新しい情報を記入
  4. 日本獣医師会に郵送かまたはFAXする
もし「飼い主控え」「登録完了通知ハガキ」を紛失した場合は、日本獣医師会に電話して問い合わせる必要があります。

手続きはめんどくさいですが、情報が変更になったのに手続きをしなければマイクロチップの意味はなくなります。

変更になった場合は必ず変更手続きを行いましょう。

マイクロチップは危険じゃないの?

体の中に異物を埋め込んで本当に危険はないの?と可愛い犬猫の健康を心配する思いは強いですね。


安全な材料を使って作られているものなので、基本的には大丈夫だと思っていいでしょう。


しかし、マウスを使った実験ではこのような数字が出ています。


400万例の実験を行ったうち、トラブルが何例出たかがわかる実験結果です。

400万例中
感染20例
腫れ23例
腫瘍2例

この数字をどう見るかです。


実験はマウスですので、体積に対してマイクロチップが大きいという点は考慮しないといけません。


大きな異物が入った時のトラブル率はどうしても上がります。


犬猫の体積に入れた時の数字はもう少し下がると言われています。


それと、今後マイクロチップが日本でも普及してくると起こると言われているトラブルがダブルマイクロチップという問題です。


ダブルマイクロチップ問題とは?

例えば、友人経由で成犬や成猫を譲り受けた時、マイクロチップが埋め込まれていることがうまく伝わらない可能性があります。


新しい飼い主は、ペットにマイクロチップが埋め込まれていることを知らずに動物病院に連れていき、確認されないまま施術が行われダブルマイクロチップが発生します。


異物が何個も体に入るのはやはり良くないですし、読み込みがうまくいかないトラブルも考えられます。


これは、動物病院側の確認ミスでもあります。


病院側がリーダーでの読み込みやレントゲンでの確認を怠った結果ですので、飼い主の責任ではありません。


しかしこれからマイクロチップが普及すると、このようなことが起こる可能性がありますので覚えておくといいでしょう。


これは、マイクロチップがすでに義務化されている国で起こっていることです。

マイクロチップを入れるのにかかる費用は?

次に、マイクロチップ埋め込みの手順と費用について説明します。


マイクロチップの種類をよく確認する

まず、行きつけの動物病院が扱うマイクロチップが、ISO規格かどうかの確認をしっかり行ってください。


ISO規格を外れているマイクロチップだと、リーダーに互換性がない場合があります。


そうなると読み取り不可になる可能性が出てきますので、どのリーダーでも読めるISO規格のマイクロチップを埋め込む必要があります。


マイクロチップを埋め込む場所は?

犬は首の付根か肩のあたり、猫は首の付根あたりに埋め込むのが一般的です。


そのあたりは犬も猫も自分で触ることができませんので、なめたり掻いたりして損傷する可能性が低い場所です。


読み取る施設側も埋め込まれる場所は熟知していますので、その周辺をくまなく探ってくれます。


マイクロチップが正常に起動しているのに、読み取れないということは起こりませんので安心してください。


マイクロチップを埋め込む方法

注射器のような形をしたインジェクターという挿入器で皮下組織に埋め込みます。


まずはじめに、埋め込む前のマイクロチップをリーダーで読み込んで、書類に記載されている数字と相違がないかを確認します。


確認が完了すればインジェクターで埋め込み、早ければ数分で施術は終了です。


かなり太い注射器になるので痛そうですが、それほど痛がることはないようです。


飼い主の希望があれば部分麻酔を使いますが、一般的には麻酔なしですぐに終了するものです。


埋め込みが終われば皮膚の上からリーダーで読み取り、正常に反応すれば完了です。


その後、書類の飼い主控えを受け取り、一般的には動物病院側でID登録の手続きをしてくれます。


後日、登録完了通知ハガキが自宅に届きます。


この飼い主控えと登録完了通知ハガキは大切に保管しておきましょう。


先にもお話したように、飼い主の変更や引っ越し時の変更手続きに必要になります。


マイクロチップ埋め込みの費用

マイクロチップ埋め込み施術の費用は、動物病院により変わってきます。


高くても1万円、平均では3,000円~5,000円ほどになります。


そして、ID登録の手続きにも別途1,000円が必要です。

マイクロチップを入れるとスマホとGBSで位置が分かるの?

マイクロチップにはGPSはついていません


マイクロチップを埋め込んだ犬猫が脱走しても、スマホなどで居場所を特定することはできません。


迷子になった犬猫が誰かに保護されて、動物病院、動物愛護センター、保健所などに連れて行かれ、リーダーで情報を読み取り&照合してやっと飼い主に連絡が来る仕組みです。


拾われて公共施設に連れて行かれたらマイクロチップ読み取りに繋がりますが、逃げ続けていたり誰かに持っていかれた場合はマイクロチップは意味がなくなります。


GPS付きのマイクロチップが開発されたら迷うことなく埋め込むのですが、現時点ではまだそこまで進化していないようです。

マイクロチップは壊れないの?

マイクロチップは壊れない、30年間の耐年数があると言われていますが、海外では壊れる例もあるようです。


とても低い確率ですが、やはり人工的なものはいつか壊れることを見越して、定期的に自分で確認するという方法を取る人もいます。


リーダーはAmazonなどの通販サイトで売っています。


高いものでは1万円を超えますが、手頃な値段で6,000円ほどのものがよく買われているようです。


そのリーダーで、毎月一定の日に読み込んでみます。


読み込みが完了すると数字の羅列が表示されますので、それを確認できたら正常です。


読み込みができない場合は、マイクロチップが故障していたり、皮下脂肪の中を移動している場合がありますので、動物病院で確認してもらう必要があります。


しかし、めったに壊れるものではありません。


ペットの健康診断の時に、動物病院が持っているリーダーで読み取り確認してもらうくらいで充分でしょう。

        

まとめ:マイクロチップの概要や疑問点について

犬猫のマイクロチップについて説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。

この記事のポイントは、
  • マイクロチップは主に動物取扱業者へ課せられる義務
  • すでに飼っている犬猫や、個人間でもらい受ける犬猫は努力義務
  • 殺処分や虐待、異常繁殖を防ぐためにも有効
  • 迷子や事故で保護された犬猫を早く引き取れる
  • マイクロチップはGPS機能はついていない!
でした。

マイクロチップを埋め込むか埋め込まないかは難しい判断ですが、これからペット保険に入る方は埋め込んでおいたほうがいいでしょう。

なぜなら、マイクロチップを埋め込んでいる犬猫は、保険料の割引が適用される保険会社が多いからです。

万が一の時に一刻も早い発見につながって、しかもペット保険の負担も少なくなるとしたら、やはり埋め込んでおくのが賢明かと思います。

MOFFMEでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、是非ご覧ください。