内容をまとめると
- 去勢や避妊手術はペット保険の補償対象外!
- しかし、望まない妊娠や病気を防ぐために、手術は受けるべき
- 避妊手術には地方自治体から補助金が出ることも
- ペット保険に加入しようと考えている方は、ペット保険のかんたんお見積もりがおすすめ!
犬や猫の去勢・避妊手術は望まない繁殖防止、性ホルモンの病気の予防や発情に伴う病気の予防・治療のために推奨されます。そんな去勢・避妊手術にかかる費用はペット保険の補償対象なのでしょうか?また、去勢・避妊手術やペット保険の必要性についても解説します。
この記事の目次
目次を閉じる犬や猫の去勢・避妊手術費用にペット保険の補償は適用される?
こんにちは、MOFFME編集部で、動物病院に6年間勤めている現役獣医師の田中です。
飼い主さんのペットに対しての意識が高まった今の時代では犬猫の去勢・避妊手術を行うことは当たり前になってきています。
そんなペットブームの世の中ですが、この前、編集部にこんな質問が届きました。
「子犬の避妊手術を考えているけど、手術に対してペット保険は適応されるのでしょうか?」
結論からいうと基本的には補償対象外となります。
「最も頻繁に行われる手術が対象外なら、保険に入る必要はないのではないか?」と考える方もいると思いますが、それは違います。
この記事では、
- 去勢・避妊手術の費用はどれくらいか
- 受けるメリットデメリット
- 受ける必要性
- ペット保険の必要性
についてお話しします。
獣医師の視点から、去勢・避妊手術とペット保険の必要性について丁寧に解説します。
手術を受けようか受けまいか悩んでいる方、ペット保険加入を悩んでいる方の判断の一助になれれば幸いです。
また、MOFFMEでは「ペット保険のランキング」についても紹介しています。気になる方は一緒にお読みください。
犬や猫の去勢・避妊手術費用はペット保険で適用できない
まず大前提として、ペット保険はペットの病気やケガの治療費を補償対象としています。
したがって、予防治療にかかる費用は補償してくれないのです。
残念ながら去勢・避妊手術は病気や怪我に対する治療ではないので、補償対象外になります。これは全てのペット保険会社共通です。
ただこれらの手術は、望まない出産・病気を未然に防ぐために重要であり、多くのペットが受けています。
そのため、補償対象にしてほしいと願っている飼い主さんはたくさんいるのですが、ペット保険の前提が崩れてしまうので、今後補償対象になる可能性は低いでしょう。
では次に、
- ペットの去勢・避妊手術費用
- 避妊手術費用の補助制度
去勢・避妊手術はどのくらいの費用がかかる?
こちらでは犬・猫の去勢・避妊手術の内容や、その費用について説明します。
犬の場合
- 去勢手術:20,000円〜35,000円
- 避妊手術:30,000円〜45,000円
対象者 | 該当記事 |
---|---|
去勢のデメリットを知りたい方 | 犬を去勢して後悔?去勢のデメリット、去勢方法・費用相場等を解説 |
去勢後の不安を払拭したい方 | 犬は去勢後にどうなってしまうの?飼い主さんの不安を徹底解消 |
- 全身麻酔
- 手術
- 注射
- 術後内服薬
- 術後抜歯処理
- 去勢手術:13,000円~25,000円程度
- 避妊手術:22,000円~30,000円程度
- 去勢手術:20000円~50000円
- 避妊手術:30000円~50000円
各自治体が去勢・避妊手術の費用を補助してくれる?
それなりに高額になる去勢・避妊手術ですが、ペット保険は補償してくれないことがわかりました。
しかしその代わりに、なんと多くの地方自治体では、犬猫に関して去勢・避妊手術の費用を補助する措置がとられているのです。
この措置は「不妊・去勢手術助成金」「不妊・去勢手術補助金」と、自治体により名称は様々です。
気になる補助金(助成金)ですが2,000円~20,000円程度と、こちらも自治体間で大きな差があります。
ペット保険で補償されなくてもこちらの制度が利用できれば、ある程度の費用負担は賄えます。
ただし、制度の利用条件も各自治体によってバラバラで、例えば
- 動物愛護センターから譲渡された犬猫が対象
- 飼い主のいない犬猫が対象
- 助成対象は猫のみ 等
乳腺腫瘍の摘出と同時に避妊手術をする場合の値段は?
乳腺腫瘍とは乳腺にできる腫瘍のことで、避妊手術をしていない高齢のメスによくみられる症状の1つになります。
原因ははっきりと判明しておらず。遺伝的要因やホルモンバランスが関係しているといわれてます。
避妊手術にはこういった病気を予防するメリットもあります。では実際に乳腺腫瘍と判明した際に、摘出手術を受けた後に入院や治療を含めるとどのくらいの費用になるのかご紹介します。
種類 | 摘出手術 | 摘出+避妊手術 |
---|---|---|
犬 | 8万~20万 | 11万~25万 |
猫 | 6万~20万 | 8万~25万 |
うさぎ | 10万前後 | 8万~20万 |
以上の表からもわかる通り、乳腺の摘出手術にかかる費用の幅は非常に大きいです。その原因として手術方法が多岐にわたることが挙げられます。
具体的な方法として
- しこりがある乳腺のみを切除する
- しこりがある乳腺とつながりの深い乳腺を取る
- しこりがある片側すべての乳腺を取る
- すべての乳腺を取る
犬や猫に去勢・避妊手術は必要?メリットとデメリットを紹介
手術を行うことはもちろんいいことばかりではありません。なにかを行う場合は良いこと・悪いことが表裏一体でくっついてくるものです。
この項では犬猫の去勢・避妊について
- 手術することで得られる効果
- 手術を行うことのリスク
- 何歳くらいで行うのがベストか?
- 結論として去勢・避妊はやったほうがいいのか?
病気を防げる?犬や猫の去勢・避妊手術のメリットとは
ではさっそく去勢・避妊手術のメリットから説明していきましょう!主なメリットは以下の4つです。
- 生殖器官系の病気の予防
- 性ホルモン関連疾患の予防
- 望まない出産を防ぐ
- 問題行動の減少
- 精巣腫瘍
- 精巣炎
- 卵巣・子宮腫瘍
- 子宮蓄膿症
- 子宮水腫・粘液種
【性ホルモン関連疾患の予防】
- 乳腺腫瘍
- 前立腺肥大
- 会陰ヘルニア
避妊手術時期 | 犬の乳腺腫瘍発生率 |
---|---|
初回発情前 | 0.05% |
1回発情後 | 8% |
2回発情後以降 | 26% |
- 繁殖させる予定はない
- オス・メスの多頭飼い
- 家の中だけでなく、外にも自由に行く(主に猫)
犬や猫の去勢・避妊手術のデメリットとは
それでは逆にデメリットはなんでしょうか?主なものは以下になります。
- 肥満になりやすい
- 術後の尿漏れ発生率の上昇
- 全身麻酔のリスク
ASA分類と死亡率 | 犬 | 猫 |
---|---|---|
クラス1 まったく健康な動物 対象:去勢、避妊、断耳、断尾 | 0.59% | 1.06% |
クラス2 軽度ないし中程度の全身症状を示す動物 対象:老齢動物、軽度の骨折、肥満、皮膚腫瘍、潜在精巣 | 0.72% | 1.11% |
クラス3 中程度ないし重度の全身症状を示す動物 対象:慢性心疾患、発熱、脱水、貧血、開放骨折、軽度肺炎 | 1.01% | 3.33% |
クラス4 死に至るほど重篤な全身症状を示す動物 対象:尿毒症、膀胱破裂、脾臓破裂、横隔膜ヘルニア | 18.3% | 33.3% |
クラス5 手術に関らず24時間生存が期待できない瀕死の動物 対象:極度のショック・脱水、末期腫瘍、長時間の胃拡張捻転 | 麻酔不可の為 省略 | 麻酔不可の為 省略 |
どんな手術であれ全身麻酔というものは100%安全が保障されているものではないので絶対に大丈夫とは言い切れません。しかし、健康な若い犬猫の場合の麻酔リスクというのはかなり低いです。
去勢・避妊手術の最適な時期はいつか
では手術を受ける最適な時期はいつでしょうか?動物病院にもよりますが一般的には生後6カ月齢で行うことが推奨されています。
早すぎる去勢・避妊手術は全身麻酔リスク・発育不良・尿失禁・排尿障害などの合併症がでるといわれています。
逆に遅すぎても発情やマーキングが始まってしまうので気を付けましょう。
結局去勢・避妊手術はした方が良い?
メリットとデメリットをそれぞれ説明してきましたが、獣医師として言わせていただくと去勢・避妊手術はしたほうがいいです。
デメリットはもちろんゼロではないですが、基本的に肥満以外は発生率は低く、肥満に関しても飼い主が気を付けて食事・運動管理を行うことで防げます。
日常の診療でもよく飼い主さんから「不妊手術はしたほうがいいのか?」と聞かれる機会は多いです。
私は「子供を産ませる予定がないのであれば、手術によるメリットの方がはるかに大きいので行った方がいい」とお伝えしています。
中には健康な体にメスを入れるのが可哀そう・自然のままがいいという理由で行わない人もいます。その考え自体を否定はしませんが、手術をしなかったことを後悔をする場合もあります。
診療の中で、10才の重度の心臓病を患ったチワワの子が子宮蓄膿症になってしまい、麻酔リスクが高いことから飼い主さんは手術を希望せずそのまま亡くなってしまうという出来事もありました。
飼い主さんは「避妊手術を若いうちに・心臓病になる前にやっておけば。。」と自分を責めていました。
あくまで上記の例は結果論です。去勢・避妊をしなくても長生きしている子はいます。
しかし、手術をした方がかかる病気が少なくなるのは事実なのでみなさん後悔しない選択をしてください。
去勢・避妊手術がペット保険の補償対象になる可能性も?
ペット保険では、原則として去勢・避妊手術が補償対象外になることをお伝えしてきました。
しかし、別の病気や怪我の治療が理由で、去勢・避妊手術が必要となった場合、ペット保険の補償対象となることもあります。
そのペット保険の補償対象となるケースとしてあげられるのが、「子宮蓄膿症」「前立腺肥大」という症状です。
こちらでは、
- 子宮蓄膿症の原因と予防法について
- 前立腺肥大の原因と予防法について
保険適用してくれるペット保険は?各社を徹底比較!
去勢・避妊手術はペット保険で基本的には補償されないと紹介しましたが、実際にはどうなのでしょうか?
結論から申し上げますと、基本的にどのペット保険会社も去勢・避妊手術を目的をした場合、補償はされません。
ただし、乳腺腫瘍などの病気に対する治療の一環として行う場合は、補償の対象になることがあります。
発情後になりやすい?子宮蓄膿症の原因や予防方法を紹介
子宮蓄膿(ちくのう)症とは、犬に多いと言われている病気です。症状としてはメスの子宮内膜が腫れて細菌感染を起こし、最悪の場合は死に至ると言われています。
当然手術は必要となり、卵巣と子宮を摘出します。この場合にはペット保険が適用されます。
子宮蓄膿症の原因
子宮内に細菌が侵入・繁殖することで膿がたまることで引き起こされます。特に犬ではホルモンバランスの関係で発情後の子宮粘膜に感染が起こりやすくなります。
子宮蓄膿症の予防方法
去勢していない犬に多い?前立腺肥大の原因や予防方法を紹介
前立腺肥大はオスの犬に多く、犬種を問わず6歳以上の老齢で未去勢犬によく発生します。
こちらも手術が必要です。去勢手術後、ホルモン剤の投与等の治療が必要となります。もちろん、去勢手術をはじめとしたこの病気の治療にはペット保険が適用されます。
前立腺肥大の原因
精巣から分泌される雄性ホルモンと雌性ホルモンの不均衡が原因で前立腺が肥大します。
前立腺肥大の予防方法
補償対象内の場合、保険金はどうやって請求する?
実際に補償対象になった場合、どうやって保険金を請求すれば良いのでしょうか?
実はペット保険には、2種類の請求方法があるのです。「窓口精算型」「直接請求型」という方法があります。
窓口精算型
補足:去勢・避妊治療以外でペット保険の補償対象外になるもの
冒頭で、予防治療にかかる費用はペット保険の補償対象外になることはお伝えしました。
では、それ以外にどのようなものが対象外になるのでしょうか。
ほぼ全ての保険会社で対象外となる費用は、
- 予防で防ぐことのできる病気(フィラリア、狂犬病)
- ワクチン(フィラリア、狂犬病、ノミ、ダニ)
- 健康診断
- 先天性疾患・既往症
といったものが挙げられます。
結構多いですよね。普通の病気の治療費よりも、予防接種や健康診断に払っている費用の方が高いという方もいるかもしれません。
しかし、今のところこれらが補償対象になる予定はないようです。
またペット保険に加入していても、慢性疾患だと診断されると次の年からその病気が補償対象外になる、または契約を打ち切られるというケースもあるようです。
去勢・避妊手術が補償されないのにペット保険は必要?
一般的な去勢・避妊手術に対して保険は補償されませんが、手術を行っていても他の病気になる可能性はゼロではありません。
一部の病気の罹患率・発生率を減らすことはできますが全ての病気に対して効く魔法の予防法ではないのです。避妊去勢の有無が関係ない病気で高額な医療費が必要となるものはたくさんあります。
例えば大型犬で多い「胃拡張胃捻転症候群」という病気は突然発症する上に、すぐに緊急開腹手術をしないと命にかかわる怖い病気です。
この病気の手術費用は20~30万円ほどといわれています。(銀座ペットクリニック参考)
急にこの金額を診察室で伝えられてお金を準備できるでしょうか?人によっては金銭面から手術をすぐに決断できない場合もあるでしょう。
医療費に対する金銭的余裕ができれば治療の選択肢の幅が広がり、その子にとって最善の治療を施すことができます。
保険から医療費の手助けをしてもらうことで命が助かることは多いです。以上のことからペット保険への加入はよほどのお金持ちでなければ入っておいたほうがいいです。
また「万が一、ペットになにか起きてもお金の心配はしなくていい」という飼い主さん自身の精神の安定にもつながるのでぜひオススメしたいです。
補足:手術の後はエリザベスカラーよりも術後服がおすすめ
ペットに去勢・避妊手術をうけさせたあと、傷口が気になって患部をなめてしまうことがあります。これによって様々な感染症を引き起こしたり、傷の治りを遅らせてしまうことがあります。
そのような場合に一般的に用いるのがエリザベスカラーと呼ばれる首周りに装着するものです。しかし、苦手としている犬や猫が多くストレスの要因の1つになる可能性もあります。
そのようなときにおすすめなのが術後服です。術後服であれば普段の洋服と同じように着せるだけで患部を守ることが出来ます。
術後服のメリットとして
- 動きが制限されない
- 負担が少なくストレスにならない
- 他の犬や猫に患部を舐められない
- 患部に影響が少ない素材を使用しているものもある
- 抗菌処理が施されているものもある
犬におすすめの術後服:「ハピモア」
(引用:prtimes)
家庭用品・日用雑貨品を製造販売するスケーター株式会社のペットブランド「ハピモア」の、『獣医さんが考えた』肌にやさしい術後服です。
大阪公立大学獣医学部と共同で術後服を開発し、機能性とデザイン性を兼ね備えた「動物ファースト」を追求している術後服です。
この術後服の特徴には下記のことが挙げられます。
- 縫い目が外側にあるため肌にやさしい
- 背中で留めるので着せやすい
- 前足を通すのみで、後ろ足や頭を通す必要がない。
- 着脱の音が小さいため、非常に敏感(音を怖がる)な犬にも安心。
- 抗菌・消臭生地
- 服を着たままトイレが可能※犬の体型によってはフィットしない場合もあります。
- 面テープで着せやすく、前足だけいれさせればいいので楽だった
- 手術後の傷口をなめることなく、保護できた
- 排尿排便が問題なくできて、汚れなかった
- 開口部に余裕があり、擦れない
- シンプルで良い、耐久性がある
その他の豆知識をご紹介!
これまで去勢・避妊手術について解説してきました。
ここでは
- 想像妊娠について
- 停留睾丸について
想像妊娠することって実際にあるの?
想像妊娠は一般的に偽妊娠と呼ばれています。これは人間にも発症する可能性があります。
偽妊娠とは妊娠していないのに、妊娠した時と同じような症状が出る状態のことを指します。
具体的には
- 乳首が腫れる
- 乳房が膨らむ
- 乳汁が出る
- 食欲低下
- 巣作り行動
- ぬいぐるみやおもちゃなどを赤ちゃんのように大事に扱う
停留睾丸という病気についても知っておこう
停留睾丸とは成長と共に腹腔内から陰嚢内に降りてくるはずの精巣が、一定期間を過ぎても精巣が陰嚢まで下りてこない状態のことを指します。
停留睾丸自体の症状は特にありませんが、将来的に精巣に腫瘍ができる可能性が高くなってしまいます。
原因として遺伝的要因が最も考えられているので、これといった対策がないのが現状です。なので定期的に獣医師に触診などで確かめてもらう必要があります。
もし停留睾丸と判断された場合には、陰嚢におりてくるまで待つこともできますが、手術をする場合には精巣を摘出する必要があります。
鼠径部に停留している場合は、皮膚表面を切開する比較的負担のかからない手術で摘出できます。
しかし、腹腔内に停留している場合は開腹手術を行う必要があります。
最悪なケースとしては、精巣が全く下降しておらず停留睾丸の位置が腹腔内の深い部位にある場合、摘出手術がかなり困難なこともあります。
このように摘出が難しい場合は、超音波検査で精巣に腫瘍ができていないか定期的に検査する必要があります。
停留睾丸が起こるのは稀で病気を引き起こしたりすぐに腫瘍ができるわけではありませんので、しっかりと知識を備えて適切な対処をしましょう。