犬の尿毒症とは、腎臓の機能が何らかの原因で低下した結果、高くなってしまう状態のことをいいます。重症になると痙攣や舌壊死などの症状が見られ、進行すると死に至ることもあります。尿毒症は腎不全の末期や急性の腎不全で起こるものですので、日ごろから愛犬の様子を観察して異変にすぐ気づくようにしたり、定期的に健康診断を受けて腎疾患(もしくは腎疾患を引き起こす疾病)の早期発見につとめたりすることが大切になります。原因や治療法も解説します。
この記事の目次
目次を閉じる舌が壊死する!?犬の尿毒症とは?
人間や犬に共通で見られる病気や症状といったものはたくさんあります。
その一つが尿毒症です。
耳にしたことはあるかと思いますが、具体的にどういったものなのか、どのくらい危険な症状なのかはあまりよく分からないという人もいるのではないでしょうか?
尿毒症の症状や怖さを知っているのとそうでないのとでは、今後の対応の仕方も変わってきます。
そこで、今回MOFFMEでは尿毒症について少しでも多く知るために、
- 犬の尿毒症の症状や治療方法
- どんなことが原因で尿毒症が引き起こされるのか
- 予防するにはどうすればいいのか
- 尿毒症はペット保険の補償対象なのか
以上の点について具体的に解説していきます。
詳しく知れば異変にいち早く気が付けるだけではなく、尿毒症自体を避けられることもありますので、是非最後までご覧ください。
尿毒症はどんな病気?腎臓機能の低下で血中の老廃物濃度が高まる
尿毒症は腎臓の機能がかなり悪くなった時に見られる症状で、慢性腎臓病と急性腎障害の両方で現れることがあります。
本来であれば、尿を排出する時に不要となった老廃物や毒性物質といったものは尿の中に排出されますが、尿毒症になるとこの働きができなくなっていきます。
外に排出されなかった老廃物などは血中に溜まり続けることになるため、徐々に濃度を濃くしながら全身に行き渡るようになります。
これにより見た目でも分かるような症状が現れるようになるので、治療法や原因などと一緒に具体的に紹介していきます。
犬の尿毒症の症状は?痙攣などの神経障害や舌壊死することも!?
犬の尿毒症の主な症状
- 嘔吐
- 下痢
- 食欲不振
- 口臭
- 体重の減少
- 元気消失
犬も人間と同じように尿毒症と診断されるほど病気が悪化してしまうと、胃腸を中心に様々な症状が現れるようになります。
しかし、これらの症状が一気に現れたり徐々に全ての症状が現れるようになるとは限りません。
尿毒症の症状自体は原因によって変わることはありませんが、尿毒症を引き起こしている原因となる疾病はさまざまなので、常に注意する必要があります。ただ、どの原因でも共通して嘔吐や下痢、食欲不振などの胃腸に関する症状が見られます。
尿毒症の主な症状はこういったものですが、ここからさらに悪化するとより深刻な症状が現れます。
重度の尿毒症の時に見られる症状
- 舌壊死
- 痙攣(けいれん)
- 呼吸困難
- 意識の混濁
- 昏睡状態
症状がさらに悪化すると以上のような神経障害などが現れるようになります。
これは体の中に溜まり続けた毒素が脳神経を中心に多大なダメージを与えるためです。舌壊死に関しては血栓によって引き起こされています。
必ず見られるものというわけではありませんが、舌の先端部分などから徐々に壊死していきます。 一部分だけ明らかに色が変わっていて臭いもあるといった場合は舌壊死を疑ってみてください。
上記のような深刻な症状が見られるようになると、最悪の場合そのまま死亡する可能性が高くなってしまいます。
また、元々は元気に吠える犬だったのにいつの間にか吠えることをしなくなったり、逆に大人しい犬が急に吠え出したりすることもあると言われています。
尿毒症となった時点ですでに腎臓には深刻なダメージがあります。こういった症状が現れる前に早期発見と早期治療をして、尿毒症にならないようにすることが大切です。
クルーズ動物病院の公式サイトで尿毒症の原因である慢性腎臓病について、詳しく解説されているので、ぜひ一度チェックしておきましょう。
犬の尿毒症の原因
尿毒症という症状が現れる原因はひとつではありません。
しかし、どの原因も腎臓や腎臓に関係している何かがダメージを受けることで引き起こされます。
そこで、具体的にどんな原因があるのかをこれから紹介していきます。
急性腎障害
急性腎障害は数日、早いと数時間で急激に腎臓の濾過機能が低下する病気です。
慢性腎臓病に比べると発生率は低くなりますが、ぶどうやユリ科の植物などを食べてしまうと起こることがあります。
飼い主やその家族が薬を服用している場合、人間用の薬を誤って口にしてしまうことでも起こることがあるため、薬の保管には十分注意しないといけません。
これらは全て含まれている成分によって引き起こされますが、他にも感染症などが原因になっていることもあります。
慢性腎臓病
短期間でどんどん状態が悪くなる急性腎障害に対して、慢性腎臓病は数ヶ月、または数年という時間を使って少しずつ腎臓機能が低下し進行していきます。
原因は加齢や急性腎障害の長期化によるものが多く、遺伝性のこともあります。
症状が現れにくく、日常の様子から発見することが難しいので早期発見には定期検診などの必要があります。
子宮蓄膿症
子宮内にサルモネラや大腸菌などの細菌が入り込み、増殖することで起こる病気です。主に免疫力が低下する発情後の黄体期にかかる恐れがあり、腎不全や尿毒症などを引き起こすことがあります。
そのため、避妊手術をしていない雌犬を飼っている場合は十分注意しないといけません。
心疾患
心不全などで心臓の働きが悪くなると血流が悪くなります。この血流の悪さは腎臓にも悪影響を及ぼすようになり、腎不全を引き起こすと尿毒症などの症状があらわれることがあります。
尿路系疾患
こうしてみると分かるように、尿毒症を引き起こす原因は様々です。
ただ、どの場合も腎臓の働きを著しく低下させた際に起こるので、尿毒症を引き起こさないように原因となる病気を少しでも早く発見できるようにしていきましょう。
犬の尿毒症の治療・手術方法は?回復する可能性もある
犬の尿毒症の治療はその原因によって全く違う方法で行っていきます。
通院
- 点滴(静脈点滴や皮下点滴)
- 薬(吸着剤や利尿剤など)
尿毒症の治療では、溜まり続けた老廃物の除去や原因となる病気の治療、原因となる病気に合わせた薬の投与する対症療法が行われます。
また、血液検査や尿検査といったものが行われることもあります。
入院
- 透析
- 点滴
- 注射
尿毒症を引き起こした原因によっては入院による治療が必要になる場合があります。
入院中は基本的に静脈点滴を行ったり、血液透析を行うこともあります。
その他、原因となった病気の治療も同時にすることになります。透析は一度の治療で終わるようなものではなく、何度も行います。
手術
尿路結石や腫瘍などが原因で尿毒症を起こしている場合は、外科手術を行うこともあります。
急性腎障害で早期に適切な治療を行うことができれば腎機能が回復することは十分にあります。
しかし、重度の急性腎障害や慢性腎臓病の場合など一度低下してしまった腎機能は回復することはありません。
そうならないようにするためにも、普段から愛犬の様子を見て早期発見、そして早期治療を行っていくことが重要です。
犬の尿毒症の予防法は?検査結果の数値に気をつける
すでに病気にかかっていたとしても、しっかり治療を行っていけば尿毒症を回避、あるいは時期を遅らせることができる可能性があります。
健康診断
定期的に健康診断で血液検査や尿検査をすることもおすすめです。健康診断をすることで普段の生活では気が付かない異常もすぐに発見することができるからです。
調べる内容は以下の2つです。
- 血液検査で腎臓の機能を調べる
- 腎機能は血清クレ アチニンや血中尿素窒素などの数値を調べる
血中尿素窒素も血清クレアチニンと同じくらい重要な項目です。血清クレアチニンや血中尿素窒素の数値が高くなればなるほど症状が進行しているので、見逃さないようにしましょう。
慢性腎臓病は血清クレアチニンの数値の高さによって重症度のステージが1~4に分けられ、数字が高くなる程腎機能が低下していることになります。
血液検査で異常が発見できるのはステージ2からで、この頃になると腎機能は33%~25%まで低下しています。
目に見える症状としてはたくさん水を飲んでたくさんの尿を出す多飲多尿がありますが、異常として認識されないこともあり、見逃されてしまうケースもあります。
このように、症状として現れているにも関わらず気付かないケースがあるため、定期的に血液検査で数値を確認するようにしてみてください。
ただし、血清クレアチニンは筋肉由来の窒素化合物であるため、小型犬の場合は中・大型犬に比べて筋肉量が少ないということから腎臓に異常があっても血清クレアチニンが上昇しにくいと言われているので、注意が必要です。
ちなみに、尿毒症が現れるのはステージ4で、腎機能は10%以下にまで落ちてしまっています。
また、尿検査では尿たんぱくや尿比重から腎機能の状態を確認したり、結石があるかどうかを調べることができます。どちらの検査も尿毒症やその他の病気の早期発見には欠かせないものですので、しっかり受けるようにしましょう。
食事の見直し
タンパク質やリン、ナトリウムの摂り過ぎは腎臓に負担がかかってしまうため、7歳を過ぎたら高齢犬用の腎臓ケアができるフードに変えてみてください。
ただ、人間の食べ物を与えてしまうと腎臓のケアができるフードを与えている意味がないので気をつけましょう。
飲水量と排尿量の確認
慢性腎臓病の初期症状として多飲多尿があります。
水をたくさん飲んでたくさん尿を出すことが増えてきた場合は腎機能が低下しているかもしれません。
また、尿路系疾患の場合は尿の量が減ってしまったり、まったくでなくなってしまったりします。
他にもトイレの時に痛がっていたり血尿が出ていたりすることもあるので、犬のトイレの様子や尿の色などもチェックするようにしてみてください。
もし、いつもとは様子が違うと感じたら早めに動物病院へ連れて行くことをおすすめします。
尿毒症になるかならないかは発見するタイミングやその後の対応などで大きく変わってきます。
愛犬に辛い思いをさせるのはもちろんですが、飼い主も大きな負担を背負うことになりますのでできることは普段からやってみるようにしましょう。
尿毒症にかかりやすい犬種や年齢は?
これまで、犬の病気の中で特に尿毒症に関して見てきました。尿毒症は腎臓が悪くなるあらわれる症状だということががわかりました。
これから犬の中でも、特に尿毒症のなりやすい犬種はあるのかどうかについて解説していきます。また、年齢によってもかかりやすさに違いがあるのかをこれから紹介していきます。
尿毒症にかかりやすい犬種
尿毒症になりやすい犬種がわかれば、その犬種を飼っている方は注意できるのですが、尿毒症になりやすい犬種はいませんが、急性腎障害や慢性腎臓病になりやすい犬種はいます。
尿石症になりやすい犬種として以下が挙げられます。
- ミニチュア・シュナウザー
- ラサ・アプソ
- ヨークシャー・テリア
- ペキニーズ
- パグ
- スコッチ・テリア
- ワイヤー・ヘアード・テリア
- ウエスト・ハイランド・ホワイトテリア
- ビーグル
- シェットランド・シープドッグ
- コリー
どんな犬種でも尿毒症になりえます。尿毒症は腎臓の機能が低下することによっておきるので、塩分の取り過ぎなどが原因のことが多いです。人間の食べ物を食べてしまうと、どうしても犬の体には負担になりますので、飼い主の食べ物を欲しがっても絶対に与えないようにしましょう。
また、犬の外見から尿毒症を発見するのは難しいので、できたら1年に1度は健康診断を受け、血液検査や尿検査をしていれば安心です。
尿毒症にかかりやすい年齢
これから、犬の尿毒症にかかりやすい年齢について説明します。
尿毒症は犬の犬種によってもかかりやすさに差はありません。しかしながら、年齢が進むごとに人間と同じで病気になりやすくなります。
- 0歳 0.056%
- 5歳 0.123%
- 10歳以上 2.407%
このような尿毒症の有病率のデータもあります。これを見ると年齢が高くなると徐々に増えていくのがわかります。
10歳は犬種によりますが、人間でいうと60歳ぐらいです。
10歳ぐらいから尿毒症にり患する確率が増えてくるので、ペットの様子に気を配ってあげてください。
犬の尿毒症はペット保険で補償される?
まずは犬の尿毒症にどのくらいの治療費がかかるのかを具体的に紹介していきます。
通院にかかる費用の一例
治療内容 | 費用 |
---|---|
皮下輸液 | 2,000円 |
利尿剤 | 1,500円 |
ここからさらに血液検査や尿検査、診察料といったものがかかるため、全てを合計すると1ヶ月に2万円~5万円程度が治療費として必要となります。
手術にかかる費用の一例
手術内容 | 費用 |
---|---|
尿路結石摘出 | 14万円 |
手術にかかる費用だけでも非常に高額であることが分かるかと思います。
尿毒症を起こしている場合は、カテーテルによる閉塞の解除を行うか手術をし、その後食餌療法を行います。
また、どちらも再発する恐れがあるため、その度に治療となると払いきれなくなってしまうこともあるでしょう。
入院にかかる費用の一例
治療内容 | 費用 |
---|---|
静脈点滴 | 3,000円 |
透析 | 12,000円 |
透析になるとカテーテルの処置をする必要があるため、それに2万円ほどかかってしまいます。
費用も1ヶ月ではなく、一回でこの金額となるので何度も行えばそれだけ金額が多くなっていきます。
さらに、手術の場合もそうですが、入院の時はこれらの治療の他に入院料がかかります。
その入院料と治療費を合わせるとトータルで20万円近くになることもあります。
ここで紹介した費用はあくまでも一例なので、犬の大きさや病院によって金額は変わります。
しかし、どの場合であってもすぐにこの金額を用意することが難しいというご家庭もあるのではないでしょうか。
そこでおすすめしたいのがペット保険です。
尿毒症の治療は、ほとんどのペット保険で補償対象となっています。
上記でも治療費について触れましたが、手術や透析などになると10万円~20万円といった高額な治療費が必要になります。
通院でさえも1ヶ月に数万円という金額になってしまうため、家計の大きな負担になることは間違いありません。
しかし、そんな時にペット保険に加入しておけば、いつでも安心して愛犬に十分な治療を受けさせてあげることができます。
いくらかは飼い主が負担することに変わりはありませんが、全額自己負担する必要が無いというのは経済的・精神的の大きな助けとなるはずです。
ペット保険に加入する際の注意点は?
ペット保険は医療費の負担を全額から5割まで保険によってカバーできることができ、高額な犬の医療費の助けになります。いざという時のためのペット保険ですが、ペットが病気になっていると加入をお断りされることがあります。
すでに腎不全や尿毒症の症状が出ていると加入できない可能性があります。というのも、ペット保険は基本は健康なときに入っておき、いざ病気になったり怪我をしたときに保険で対応するというスタンスだからです。
病気になってから、保険金を払って欲しいから保険に加入するでは、保険会社はやっていけません。ですので、もしくは病気である場合はその病気は保険の対象外になるけれども、それ以外の病気は保険で対処しますという加入の方法があります。また、場合によっては加入前に健康診断が必要なこともあります。
その特定の疾患を保険の対象外にする特約があり、これを付けることにより、特定の病気以外の病気はペット保険で補償されることになります。
尿毒症のような病気になってしまうと、医療費がかさみますので、それを補償できるようペット保険はなるべく若く健康なうちに加入することをおすすめします。
まとめ:犬の尿毒症について
これまで犬の尿毒症について、詳しく紹介してきました。
この記事のポイントは
- 尿毒症は腎臓の機能が悪くなった時に見られる症状で、慢性腎臓病と急性腎障害で現れる
- 尿毒症の原因は主に急性腎障害と慢性腎臓病
- 尿毒症は点滴や薬、透析、手術などの方法で治療する
- 急性腎障害で早期治療ができれば腎機能が回復するが、重度や慢性腎臓病の場合は回復が難しい
- 尿毒症を予防、早期発見するために食事の見直しや定期検診などを行う
- 尿毒症治療はほとんどのペット保険で補償対象なのでペット保険に加入しておくことがおすすめ
以上です。
犬は自分で体調が悪いことを訴えることができません。飼い主さんが気を配り、なにかいつもと違うと感じたら動物病院につれていってあげてください。それでも、気付いたときには進行してることがありますので、なるだけ1年に1度、健康診断を受けさせてあげましょう。
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