不正咬合はうさぎが罹り易い病気の一つ。二次的な病気を発症し易く、一度罹ると完治しにくい厄介者です。一方生まれつきの場合を除けば、食事や飼育環境の改善で予防可能な病気でもあるんですよ。今回はうさぎの不正咬合の症状・原因・治療法・予防法について解説していきますね!
この記事の目次
目次を閉じるうさぎの不正咬合ってどんな病気?症状から見分け方を解説
不正咬合(ふせいこうごう)とは、うさぎやげっ歯類(チンチラ、モルモットなど)が罹り易い病気で、歯の伸び過ぎで、噛み合わせが悪化する「歯科疾患」です。完治しにくく、治療しても再発する事が多いので生涯通院が必要になる場合も・・・!
何故そんな病気に罹ってしまうのでしょうか?これはうさぎの歯が「常生歯」という「一生伸び続ける」性質を持っている事に関係しています。
常生歯は本来、ものを食べる時の咬耗や摩耗で、自然と適切な長さ・形状に削られていくもの。ところが歯根の歪み、不適切な食生活等、何らかの原因により、歯の摩耗が正常に行われないと、歯が延々と伸び続け、不正咬合になってしまうのです。
そんな不正咬合は、他の障害・病気を招く要因にもなり、悪化すれば命にも関わる為、早期発見・早期治療が重要になってきます。
奥歯(臼歯)の不正咬合は気が付きにくいのですが
- 食欲はあるのに食べられない
- 目やにがでたり、眼球が飛び出る
- 頻繁に歯ぎしりをする
などの症状がみられれば不正咬合の可能性が高いです。
以下の解説で、不正咬合とこれらの症状がどう関係あるのか理解しておき、兆候が見られれば早期に対処する様にしましょう。
不正咬合の症状①食欲はあるのに食べられない
不正咬合になると「食欲はあるのに食べられない」状態に陥る事が多いです。歯が伸び過ぎたり、いびつな形状になる事で、牧草を上手く咀嚼したり、ペレットをうまく口に運ぶ事が出来なくなる為です・・・。また奥歯が伸び続けて、口内に当たると、口の中の痛みや違和感から、食べたくても食べられなくなる事もあります。
そして「うさぎの歯が削られる」のは、日頃から「繊維質豊富な牧草を食べる事」による部分が大きいので、牧草が食べられないと症状は悪化の一途。さらに牧草を食べられないと胃腸の動きが低下するので、二次的な病気として胃腸うっ滞にも罹り易くなります。そうなると今度は食欲すらなくなっていくので、痩せるだけでなく衰弱していきます。
とまあ、ひたすら悪循環なんですね・・・。
体調不良時の食欲不振との見分け方としては、不正咬合の場合
- 食べたそうにしているけど食べない
- ペレットをポロポロこぼしている
- においだけ嗅いで食べようとしない
- 柔らかいものだけしか食べない
などの様子が見られるという事です。こういった様子が見られれば、不正咬合で歯の噛み合わせが悪くなっている可能性を疑いましょう。
不正咬合の症状②目やにがでたり、眼球が飛び出る
本来涙は目で24時間作られ、これが鼻涙管という細い管を通って、鼻の中に排出されています。不正咬合が進行すると、切歯(前歯)や臼歯(奥歯)の歯根が伸びて、鼻涙管が圧迫されます。
すると涙が鼻に排泄されずに常時あふれ出るようになったり、感染を起こして目やにが出るようになったりします。また涙で濡れた皮膚が、皮膚炎を発症する事もあります。
同じく涙や目やにがたくさん出る結膜炎との見分け方としては、不正咬合ならば
- 鼻腔も歯根に圧迫されて、くしゃみを頻発する様になる
- 歯根の細菌感染から肥大した膿で眼球が飛び出す
等の異常が見られるケースが多いという事です。特に後者には注意!
うさぎの眼科疾患のほとんどは不正咬合にあるともいわれ、酷くなると角膜潰瘍や緑内障に発展し、眼球摘出手術が必要になる場合もあります。眼球突出は不正咬合でも特に緊急性が高い状態ですので、迷わず病院に行ってくださいね・・・。
眼球が飛び出すまで行かなくても、くしゃみに加え、目の周りが常に濡れていたり、目やにがついていたり、頬や顎が腫れてきたりした場合は、不正咬合の可能性を疑って、病院を受診しましょう。
不正咬合の症状③頻繁に歯ぎしりをする
うさぎが不正咬合になった時の典型的な症状として「歯ぎしり」が挙げられます。
うさぎの歯ぎしり自体は珍しいものではありませんが、リラックスしている時や甘えている時に「ショリショリ」「コリコリ」といった軽快なリズムの音を鳴らすのに対し、不快な時、痛みを我慢している時等には「ゴリゴリ」「ギリギリ」と鈍い音を鳴らすのが特徴です。
「リラックス時の歯ぎしり」は前歯を軽く擦り合わせる程度であるのに対し、「不正咬合時の歯ぎしり」は奥歯を強く擦り合わせている為にこのような音が鳴るんですね。
なぜ不正咬合になると歯ぎしりをするのか?というと、「過剰に伸びた歯が頬や舌に当たってしまっている事への、痛み・不快感をあらわしている」と言われています。
「ゴリゴリ」という鈍い歯ぎしりは、不正咬合以外にも、ストレスを抱えていたり、重い病気の兆候である可能性もあるので要注意ですよ。胃腸うっ滞や急性胃拡張等、外からではわかりにくい病気で「我慢の歯ぎしり」をしているなら赤信号です。
不正咬合であるかどうかに関わらず、しきりに歯ぎしりを繰り返している様なら、何らかの健康異常を疑って病院に連れて行く事をお勧めします。
うさぎが不正咬合になる原因は?
不正咬合というのは「何らかの原因」で歯が伸び続けたり、形状が歪になり、正常な歯の噛み合わせができなくなる病気。不正咬合から二次的な病気にも繋がり易いので、決して軽く見てはいけません。
切歯か臼歯、一方が不正咬合になると、もう一方も不正咬合になり易くなる等、放置すれば悪くなる一方です。そして一度発症すると「治る事はない病気」ともいわれているので、何よりもまず「予防」が重要になってきます。
そして予防する為には原因を知る必要がありますが、大部分は食生活や飼育環境の改善で解決する事だったりします。不正咬合の主な原因は次の3つ。
- 食生活が不適切
- おもちゃやケージ・トイレなどのかじり癖
- 遺伝的・先天的な要因
以下で原因別にどう不正咬合という病気に結びつくのか解説していきますので、食生活や飼育環境の改善にお役立て頂ければ幸いです!
不正咬合の原因①食生活が不適切
不正咬合の原因として多いのが不適切な食生活です。
うさぎの歯は生涯伸び続ける性質を持つ事、しかしものを食べる時の摩耗で、適切な長さ・形状に保たれる事を冒頭でお話ししました。
つまり歯が正常に削られていくには、日頃から「何を食べているか」が重要であり、例えば
- 牧草をあまり食べない
- 噛み応えがない、柔らかいものばかり食べている
といった食生活を続けていると、歯が削られる速度が伸びる速度に追いつかず、不正咬合になるリスクが上がってしまうのです。詳しくは後述しますが、不正咬合の予防には、牧草の様な繊維質たっぷりの餌を、日頃からたくさん食べるのが一番の予防になります。
おやつの与えすぎに注意
例えば普段から果物や生野菜など、おやつを必要以上に多くあげてしまうと、不正咬合になるリスクが上がります。おやつでお腹一杯になってしまうと、牧草をあまり食べなくなり、歯の摩耗も進まなくなる為です。
ペレットの与えすぎに注意
またペレットばかり食べているのも問題です。ペレットは牧草では摂取できない栄養素を補う上で重要ですが、牧草ほどには「歯の摩耗物質」は含まれていません。嗜好性が高いペレットを食べ放題にしていると、ペレットばかり食べて牧草を食べなくなる事があり得るので、注意してください。
不正咬合の原因②おもちゃやケージ・トイレなどのかじり癖
不正咬合は日頃から牧草の様な「繊維質の多いものを食べ続ける」事で予防できますが「噛み応えがあり過ぎるものをかじり続ける」事は、逆効果になりかねないので注意しましょう。例えなおもちゃやケージ・トイレなどのかじり癖で、切歯が欠けたり、折れたりして、食べ物を噛み切れなくなる例は珍しくありません。
うさぎは何でもかじる動物で、それ自体がストレス解消にもなっています。なのでかじる事自体を躾けてやめさせるのではなく
- 歯の破損に繋がる様な硬すぎるおもちゃは与えない
- ストレスをためて、トイレやケージを噛んだりしない様、飼育環境や接し方を見直す
- かじり木を入れてそちらに注意を逸らす
等の対策をとるようにしてください。
ケージを噛む場合の対処
ケージから出して欲しい時、金網をガジガジかじる子は多いですよね。ケージの噛み癖で不正咬合になるケースは非常に多いのですが、だからといって「ケージをかじると出して貰える」と学習すると、かじり癖がエスカレートする可能性が高いです。
ケージをかじっても基本は無視し、それでもかじるのをやめない場合は、プラスチックのカバーをかける等して対策しましょう。
不正咬合の原因③遺伝的・先天的な要因
遺伝的・先天的な要因で、生まれつき不正咬合のうさぎもいます。
残念ながら食生活やかじり癖が原因の場合と違い、遺伝・先天性の不正咬合は予防しようがないのですが、切歯の場合、早いうちなら矯正で治る事もあります。子うさぎを迎えたら一度検査を受けておくといいでしょう。
それに検査の結果「遺伝的・先天的な不正咬合」だとわかれば
- 1~2か月に1度の定期健診
- 牧草中心の食生活
等、成長期に向け早くから対策を立てられ、健康に害をきたす前に進行を防ぐ事が出来ます。生まれつきだからとネガティブにならず、前向きに病気と向き合ってあげてくださいね!
うさぎの不正咬合の治療方法や治療費について解説!保険は使える?
不正咬合になってしまったら、二次的な病気に繋がり、本格的に健康を害する前に治療を受ける様にしましょう。しかし具体的に「どうやって治療するの?」という疑問は当然出てくる事かと思います。
さらに不正咬合は完治が難しい病気で、病状により頻度の差はあれど、生涯通院が続く可能性もあります。その為治療費はどれだけかかるのか、保険は効くのか等、経済的な問題が気になる人も多いでしょう。
この治療方法・治療費・保険に関して、先に答えをいってしまえば
- 治療方法は基本「歯を削る」事
- 治療費は20,000円から30,000円
- 不正咬合にペット保険は適用外
といった感じです。特に3つ目でがっくり来た人は多いかも・・・。
以下でそれぞれの背景について、もう少し詳しく解説していきますので、現在不正咬合らしき症状に悩まれている方は参考にしてみてください。
うさぎの不正咬合の治療方法
うさぎの不正咬合の治療方針はシンプルであり「伸び過ぎた歯を削る事」です。歯科用の器具を使って歯の長さと形を矯正し、噛み合わせの問題を除去するのです。
若齢のうちに切歯の不正咬合であるとわかった場合、早期であれば矯正治療も可能ですが、既に伸びすぎてかみ合わせの悪くなった歯は、病院で適切な長さ・形状に削ってもらうしかありません。
前歯(切歯)のカット・調整に関しては無麻酔でも可能ですが、奥歯(臼歯)の処置に関しては、全身麻酔をかけて行う病院が多いようです。
さらに不正咬合の進行で
- 鼻涙管が閉塞し、流涙症や皮膚炎など二次的健康被害が出ている場合
- 伸びた歯がすでに舌や頬粘膜を傷つけている場合
等は、鼻涙管洗浄などの特殊な処置や、注射などの治療が必要になる場合もあります。
そして進行の差に関わらず、不正咬合の治療は、一度削って終わりではない事に注意。悪化する前に逐一歯を削る必要があるので、1か月に1回程度の定期的な検査・処置が必要になります。一度なってしまえば、治療に大変な根気と出費が求められる事は知っておきましょう。
治療後
不正咬合の治療をした後、口の中の違和感から食欲が減ったり、今まで食べていたものを食べなくなる事があります。こういう時は様子を見ずに主治医の先生に相談し、点滴などの追加治療が必要でないか確認しましょう。
不正咬合の治療費用はいくら?保険は使える?
- 前歯の場合:2,000~3,000円
- 奥歯の場合:約10,000円
うさぎの不正咬合の予防方法
うさぎの不正咬合は、二次的な病気で死に至るケースもある怖い病気です。しかし治療出来たとしても、一度歯根が歪んでしまえば、元に戻すのは難しいという事もあり、この病気に関して第一に考えるべきは、まずもって「予防」なんですね。
歯の伸び過ぎや変形を予防するには
- 普段から歯の摩耗を助ける食生活をさせる事
- 歯の変形や破損を防止する飼育環境を用意する事
この2点が重要です。
つまり食生活を牧草など繊維質の多いものを中心にして、歯に悪影響のあるものをかじらない様、安全な飼育環境を構築する事が重要です。
以下でもう少し詳しく、不正咬合の予防に関して抑えておいて欲しい
- 牧草をたくさん食べてもらうことが1番の予防方法!
- かじり木などおもちゃは「歯を削るためのもの」ではない!
という2つのポイントについて解説していきますね!
牧草をたくさん食べてもらうことが1番の予防方法!
不正咬合を予防するには、牧草を普段からたくさん食べてもらうことが1番です。「研磨性の高い物質」豊富な牧草を日頃から良く食べていれば、上下の歯の擦り合わせと共に、自然と歯は削られていくのです。
牧草にも色々な種類がありますが、繊維質が特に多いイネ科のものを選ぶのが1番です。ペレットと違い、食べ放題の状態にしておいて問題ないので、常に容器一杯に入れておき、いつでも食べられるようにしておきましょう!
さらに牧草はうさぎの消化器官の働きを促す役目も果たしているので、不正咬合に限らず、様々な病気の予防に効果的なんですよ。大きくなってから食生活を変えるのは大変なので、小さい頃から牧草中心の食事を心がけましょうね。
牧草を食べてくれない場合
うさぎの主食はペレット(ラビットフード)と考えられがちですが、ペレットはあくまで牧草にない栄養素を補うもの。うさぎの主食はあくまで牧草と考えてください。 嗜好性が高いペレットを食べ放題にしていると、ペレットでお腹一杯になって牧草を食べてくれなくなるので注意しましょう。
ペレットを適量与えても、牧草をあまり食べてくれない場合は、ブロック(キューブ)状に固めた牧草もありますので試してみてください。ただし成長期用の牧草であるアルファルファのブロックは大人のウサギに与えてはいけません。チモシーなどイネ科の牧草で作られたブロックを選びましょう。
また「牧草の鮮度が悪い」のも食べてくれない原因なので、牧草は普段から「湿気の少ない、風通しの良い場所」に保管し、水回りや直射日光のあたる場所は避けましょう。
かじり木などおもちゃは「歯を削るためのもの」ではない!
「不正咬合を防止する為にかじり木を入れておきましょう」と説明しているサイトもありますが、残念ながらかじり木に歯の摩耗を促進する効果はほとんどないのですよね・・・。
何故なら歯が摩耗していくのは、「牧草を食べる際の上下の歯の擦り合わせ」に依る所が大きいのであり、かじり木をかじっていたところで、とりわけ奥歯(臼歯)の擦り合わせはほぼ行われない為です。
かじり木はあくまでストレス解消用のおもちゃと思いましょう。
そして堅すぎるかじり木は、逆に歯の変形や破損を招き、不正咬合を防止するどころか、不正咬合の原因になる可能性もあるので注意してください。かじり木は程よい柔らかさのものを選んであげましょうね。
ただし不正咬合予防に利用出来る
ただかじり木は、結果的には「不正咬合の予防に役立つ」ともいえます。理由は以下の通り。
- 「ケージ・トイレなどのかじり癖は不正咬合の原因になる」と解説しましたが、かじり木を入れておけば、かじり木に気がそれて、ケージやトイレをかじらなくなる事も多いです。
- 牧草を食べる事は不正咬合の1番の予防法です。かじり木には牧草入れに出来る樽型タイプも売られており、普通の容器に入れておくよりも、牧草への食い付きが良くなる場合があります。
「かじり木を不正咬合の予防に」と考えるなら、この方向性で活用してみてくださいね!
うさぎの「不正咬合」についてのまとめ
ここまでうさぎの「不正咬合」について着目して解説してきました。
この記事のポイントは
- うさぎの不正咬合は悪化すると他の障害や病気を招き命にも関わる
- 不正咬合の症状を知って早期に気付いて対処してあげよう
- うさぎが不正咬合になる原因には日頃の噛み癖や食習慣も影響している
- うさぎの不正咬合の治療にはペット保険は使えない
- 日頃から予防をすることで、不正咬合は防ぐことができる!