プニプニとつい触ってしまう肉球。そういえばうさぎには肉球はあるのでしょうか?実はうさぎの肉球は発達していないためほとんど確認することはできませんが、うさぎに肉球がない理由は、役割を知ると腑に落ちることばかり。そこのでこの記事では、うさぎに肉球がない理由・肉球がある種類・肉球がないからこそ気をつけるべきことについて詳しく解説していきます!
この記事の目次
目次を閉じるうさぎに肉球がない理由とは?肉球の役割と一緒に解説!
犬や猫と違い「うさぎには肉球がない」ってご存じでしたか?
実際うさぎの足裏や手のひらを観察してみると分かりますが、大半の子には、厚い毛が被さっているだけで、肉球らしきものは確認出来ないと思います。そして「うさぎに肉球がない理由」は、肉球本来の役割を知れば、スッと腑に落ちると思います。
肉球というのは、プニプニで私たち人間を癒してくれるため・・・にあるわけでは当然ありません!肉球の正式な呼び名は蹠球(しょきゅう)といい、自然界では
- 滑り止めのため
- 足裏の保護のため
- 狩りの際忍び寄って獲物を捕まえるため
- 衝撃を吸収するため
- 体温調整のため
など動物が「厳しい自然環境に適応」する上で重要な役割を果たしているのです。
しかし草食動物であり土や草のある場所で暮らすうさぎはそもそも
- 肉球が必要ない環境に住んでいる
- 忍び寄って獲物を捕まえる狩りをしない
- 足ダンをするときに音が吸収されてしまう
- 体温調整は耳でする
という事もあり、「単純に必要がないから」もしくは「他で補う事が出来るから」肉球は発達してこなかったのです。
そのほかの体の特長については下記記事で詳しく紹介していますので、気になる方は参考にしてみてくださいね!
それでは、それぞれの「肉球がない理由」について、下記でもう少し詳しく詳しく解説していきます。
うさぎに肉球がない理由①肉球が必要ない環境に住んでいる
肉球の持つ役割には、滑り止めやクッションになる、足裏の保護になるという働きがあります。肉球は、角質層で覆われた厚い皮膚と、その下のコラーゲン及び脂肪組織から構成されており、耐久性と弾力性に非常に優れます。そのため
- 長距離歩いても疲れにくくする
- 筋肉や関節の故障を防ぐ
- 足場の悪い岩場で滑らないようにする
といった効果により、山地や山脈など険しい環境に棲む動物にとって「不可欠な部位」となっているのです。
一方うさぎはどうでしょうか?
うさぎの住んでいる環境は、牧草地・森林・畑などの、柔らかい草や地面の上です。足を滑らせるような急斜面もなければ、木登りの習性がないので、高所から落下する心配もありません。足裏保護としての役割はフワフワ厚く密集した被毛が果たしてくれます。
手のひらや足裏に肉球がなくても土や草がクッションの役割を果たすので、走ったりジャンプした負荷で筋肉や関節を痛める事もありません。
つまり、大半のうさぎの住む環境では「肉球の機能が必要ない」もしくは「他で補完している」ため、うさぎの足裏には肉球が発達していない、という事になるのですね。
うさぎに肉球がない理由②忍び寄って獲物を捕まえる狩りをしない
肉球には「足音を消す」という優れた機能があります。何故そんな事が出来るのかというと、脂肪組織とコラーゲンを主成分とする肉球は、クッション性に優れ「歩く時の衝撃を吸収」してくれるためです。
だからライオン・ピューマ・チーター等の肉食動物は、狩りの為に「気付かれる事なくギリギリの位置まで獲物に忍び寄る」という芸当が出来るのですね。
一方、うさぎは完全草食動物であり、そもそも肉食動物みたいに「忍び寄って獲物を捕まえる狩り」をする必要がありません。必要ないものは発達しない、だからうさぎには肉球がない・・・という自然の道理ですね。
同じ様に、ネコ科の動物は、獲物に忍び寄る際、足音を極力抑える為「爪を引っ込める」事も出来ますが、狩りの必要がないうさぎの爪は露出したままで、自由に出し入れする機能等もないのです。
うさぎに肉球がない理由③足ダンをするときに音が吸収されてしまう
肉球の役割の一つに「狩りをする時に足音を消す」事、そして「狩りの習性がないうさぎには肉球が必要ない」事についてお話しました。しかし「うさぎに肉球がない」理由には、むしろ「肉球があると困る」という事情もあるんです!
肉球があると「足ダン」が無意味に・・・
ノウサギは「ワーレン」と呼ばれる地下の巣穴を拠点に、仲間と群れて暮らしています。そして身近に危険が迫ると、前足で体を支え、後ろ足を地面に叩きつけるスタンピング(通称:足ダン)という行動をとり、地下にいる仲間に警告音を発する習性があるのです。
でも、仮にクッション性に優れた肉球があると、足ダンによる衝撃が吸収されてしまい、仲間に危険を知らせる事が出来なくなりますよね?肉球は動物の生活環境や習性によっては、必ずしもプラスに機能する訳ではないのです。
なおうさぎの「足ダン」については、下記の記事でも詳しく紹介していますので、気になる方は参考にしてみてくださいね!
うさぎに肉球がない理由④体温調整は耳でする
肉球には体温調整という、恒温動物が生きる上で欠かせない大切な役割も果たしています。肉球で汗をかき放熱する事で、過剰な体温上昇を防ぐ事が出来るという「車のラジエーター」の様なよく出来た代物なんですね。
ただうさぎの場合、このラジエーターの役割は「ある他の部位」が果たしている為「肉球がない」という訳なのです。そしてその部位とは・・・ずばり「耳」のこと!
「え?耳で体温調節?」
と不思議に思うかもしれませんが、うさぎの耳中央の血管(動脈)からは、毛細血管が「網の目」の様に細かく張り巡らされており、血管に風を当て血液を冷ますことで体温調節が出来る様になっているのです。これまた良く出来た代物なんですね。
うさぎには肉球がある種類もいるの?
大半のうさぎには肉球がないこと、またその理由についてお話してきました。
ただ少ないながら、うさぎでも野生における生息環境が険しい山や岩場であったりする場合、滑り止めの為に肉球が発達し、肉球がある種類も存在します。とりわけ
- ホーランドロップ
- ミニレッキス
- エゾナキウサギ
等が「肉球があるうさぎ」として有名です。
ただこれらの種でも肉球がある子もいればない子もいますし、ネザーランドドワーフなど、一般に肉球がない種であっても、肉球を持っている子もいます。
下記で「肉球がある種類のうさぎ」について紹介していきますが「この品種には“絶対”肉球がある・ない」という断定は難しい事は、あらかじめ念頭において貰えると嬉しいです!
肉球がある種類①ホーランドロップ
ホーランドロップは、オランダ原産のうさぎです。垂れ耳タイプの「ロップ」の中でも、特に小さい事からミニロップとも呼ばれています。
丸顔の愛くるしい見た目、温厚な性格、人懐っこさから、ペットとしてはネザーランドドワーフに負けず劣らずな人気を誇りますが、厚い被毛に覆われている長毛種な為
- 被毛に糞や草など汚れが付着しやすい
- 耳が垂れている為、蒸れで耳の病気になりやすい
- 毛玉を飲み込んでうっ滞になりやすい
など少々飼育に「コツ」を要するうさぎでもありますね。
そして、そんなホーランドロップには、足裏の厚い毛を避けると小さく可愛らしいピンク色の肉球がある種類なんですよ!もしも飼育している方は、少し失礼して見せてもらいましょう。
なおホーランドロップについては、下記の記事でも詳しく紹介していますので、興味があれば参考にしてみてくださいね。
肉球がある種類②ミニレッキス
ミニレッキスは、米カリフォルニア州生まれのうさぎで、大きめのレッキス(フランス生まれ)と小さめのドワーフ(オランダ生まれ)の交配種です。体長は35㎝ほどの短毛種であり
- ビロードの如く毛並みの美しさ
- フワフワ心地良い肌触り
- ピンと立った大きな耳
- 筋肉質な体つき
等が特徴として挙げられます。
ペットとしては、原産国アメリカを中心に人気があり、スタンダードなレッキスより少々コツはいりますが、人に慣れやすく、物覚えも良いので飼いやすい方です。
そしてそんなミニレッキスも肉球がある種類ですが、犬猫などと比べたらとても繊細です。なのでお出迎えする場合、肉球がないうさぎと同様に、床にマットを敷いたり、優しい材質のスノコを選ぶなどして、足裏に負担がかからない様にしてあげましょう!
なおミニレッキスについては、下記の記事でも詳しく紹介していますので、気になる方は参考にしてみてください。
肉球がある種類③エゾナキウサギ
エゾナキウサギは、北海道の山地に生息する野生のうさぎで、その名の通り鳴き声を発する特殊な生態で知られます。(ほとんどのうさぎは声帯が未発達で「鳴き声」は発しません)体長10~20㎝と小柄で、耳も短い為、うさぎというよりネズミっぽいですが、れっきとしたうさぎの仲間なんです!
確かに耳は短いのですが、聴覚は他のうさぎに負けず劣らず、少しの音でも警戒して逃げてしまいます。「すぐ逃げるし、小さくて視認もしにくい」という事で、一部の登山者や写真家にとっては「幻」的存在になってるとか・・・!
そして、そんなエゾナキウサギの棲家は、ガレ場と呼ばれる険しい岩場なので「足を滑らせない為」に肉球が発達しているんですね。エゾナキウサギというのは、その肉球で岩場を縦横無尽に動き回り、冬眠もせず、年がら年中餌を探し回っている「うさぎ界屈指の働き者」なんです。
エゾナキウサギについては、下記の記事でも詳しく紹介していますので、是非参考にしてみてくださいね。
うさぎに肉球がないからこそ気をつけるべきこと
肉球がないからこそ「ペットのうさぎ」については、飼い主が気をつけるべきことがあります。ペットのうさぎの生活環境は「森の柔らかい草や地面の上」ではなく「自宅の硬い床の上」なので、野生ならあり得ない「肉球がないが故の弊害」がどうしても出てきちゃうんですね・・・。
例えばフローリングやタイルは、うさぎにとって大変滑りやすい材質で出来ています。足の踏ん張りが効かない為、走っている時に足をとられて脱臼や骨折してしまうことも珍しくありません。
また硬い床の上で長時間過ごす事で、足裏への負担からソアホックと呼ばれる炎症の病気にかかる事もあります。
肉球がないとどうしても、この手のリスクがあるので、飼い主さんは
- ケージに足裏に優しいスノコを入れる
- うさぎの行動範囲内にマットを敷く
等、事故や病気を未然に防ぐ、安心安全な環境作りに努めてあげましょう!
気をつけるべきこと①骨折
野生のうさぎは「常に天敵から追われる立場」という事もあり、その骨は出来る限り細く軽く設計され、いつでも俊敏に逃げられる様になっています。
しかしそれは同時に「うさぎの骨は非常に脆い」事も意味しています・・・!
柔らかい地面や草の上で暮らす「野生のうさぎ」の場合「骨の脆さ」は、そこまで問題になりませんが、自宅の床の上で暮らす「ペットのうさぎ」の場合「骨折」という危険が常に付きまといます。
うさぎの足裏は被毛で覆われており、滑り止めやクッションの役目を果たす肉球がありません。なので例えば「うさぎがフローリングを走り回る」事は「人間が靴下のままフローリングを走り回る」様なもので、とっても危険!ダッシュした時に滑って転んで骨折してしまう事故は多いのです。
骨折を予防するには
足裏の被毛にも多少のクッション機能はありますし、爪がある程度滑り止めの役目を果たしますが、やはり肉球には遠く及びません。なので足を滑らせたり、過剰な負担がかからないように、マットやカーペットなど柔らくて滑りにくい素材を敷く等して、うさぎが安全に遊べる環境を整えてあげましょう。
骨折時のもう少し具体的な対処については、下記の記事で紹介していますので、心配な方は是非参考にしてみてくださいね。
気をつけるべきこと②ソアホック
うさぎにはクッション機能を担う肉球がありません。その為、固い床の上で暮らすペットのうさぎは、足裏への負担で毛が擦れて地肌が露出し、ソアホック(飛節びらん、足底潰瘍等とも)と呼ばれる炎症を発症する事がよくあります。
ソアホックは、罹りやすさでは胃腸うっ滞にも並ぶうさぎ特有の病気で、加齢や肥満、ストレスによる執拗なスタンピングなど、何らかの原因で「足裏への負担が過剰な状態」が続くと発症するのです。
最初は気付くか気付かないかという小さな発赤から始まりますが、時間が経つと患部が細菌感染し、露出した部分が赤く腫れたり、タコが出来たりします。酷くなると腫瘍や膿が出来て、歩くだけで痛むので、うさぎはジッと動かなくなったり、食欲も低下します。
重症化するとなかなか治らない病気ですので、足裏に少しでも脱毛の兆候が見られれば、対策を講じる様にしてください。
ソアホックを予防するには
ソアホックの治療としては、炎症を抑える抗生物質の投与が基本ですが、大前提として「足裏に極力負担がかからない環境」を整えて予防することが大切です。うさぎの行動範囲だけで良いので、マットやカーペットを敷くなりして「硬い床に接する機会」を極力少なくしておけば、発症リスクはグンと減りますよ!
なおソアホックについては下記の記事でも詳しく紹介していますので、心配な方は参考にしてみてください。