犬の腹水とは、心臓病や肝臓病など様々な原因によって現れる症状です。腹水を抜くことなく放っておいたり、愛犬が老犬だったりすると死に至る可能性があります。今回のMOFFME記事では、愛犬の腹水の原因・症状・治療法など詳しく紹介していきます。
この記事の目次
目次を閉じる愛犬の腹水ってなに?原因・症状・治療法などを詳しく紹介!
愛犬のお腹が最近少しふっくらしているな…太ったかな…と思っていたら、腹水が溜まっていたということがあります。腹水とは、お腹に水が溜まることです。
お腹に水が溜まるということは、何かしらの重大な疾患が隠れていることもあります。
心臓病や肝臓病などの内臓疾患があったり、肺が圧迫されて呼吸が苦しくなったりすることもあります。
今回MOFFMEでは、
- 犬の腹水とは?
- 犬の腹水が起きる原因は?考えられる病気を紹介
- 犬の腹水の症状を紹介
犬の腹水とは?
人間でも心臓や肝臓が悪かったりすることで腹水が溜まること(腹水貯留)があります。
腹水貯留とは体外に排出されるべき水分が排出されずお腹の中に溜まってしまう病態をいいます。
腹水が溜まるとお腹が膨れたり、呼吸をしづらくなったり、食欲がなくなったり、むくんだりします。
わんちゃんでも人間と同じように腹水が溜まることがあります。
この項では、
- 腹水のメカニズム
- 腹水が他の犬や人に移る可能性・腹水になりやすい犬種
腹水のメカニズム
お腹の中は腹膜という臓器を守る膜と腹腔という臓器を守るためのスペースがあります。
その腹腔の中に余分な水分が溜まってしまう状態をいいます。
もともと腹水は少量お腹の中にあり、腸をスムーズに動かすのに役立っていますが、溜まりすぎると体によくありません。
腹水は、横隔膜からの生産とリンパ管への吸収が繰り返されて一定の量を保っています。
余分な腹水は体外に排出されていきますが、病気などが原因でリンパ管に吸収されず体外に排出されなくなってしまったりするとお腹に水分が溜まってしまいます。
腹水が溜まることによって様々な影響が出てきます。
肺を圧迫されることで呼吸がしにくくなってしまったり、お腹が張ってしまって食欲がなくなったり、食事がうまくできなかったりします。
消化管の動きも悪くなり吐いてしまったりすることもあり、脱水や栄養失調になることもあります。
お腹が膨れていなくても腹水が溜まっていることもありますので、愛犬の様子がおかしければすぐに獣医師さんに診てもらいましょう。
腹水が他の犬や人に移る可能性・腹水になりやすい犬種
腹水自体は体内の水分や体液が主であり、感染症ではないためうつることはありません。
原因は次の項で詳しく解説していきますが、内臓疾患が原因や体内の炎症が原因の場合、血液循環が悪くなるのが原因です。
細菌感染などの炎症による腹水だとしても腹水を直接触ることがないためうつりません。
そのため、飼い主さんや同居のわんちゃんなどに腹水がうつることはありませんのでご安心ください。
なりやすい犬種はとくにありませんが、心臓病を持っていたり肝臓病、腎臓病を持っていたりするわんちゃんは要注意です。
特に心臓病や肝臓病、腎臓病を持っている老犬は、若齢の犬より腹水になるリスクが高くなります。
犬の腹水が起きる原因は?考えられる病気を紹介
わんちゃんの腹水はなぜ起きるのでしょうか。わんちゃんの腹水が起きる原因や考えられる病気があります。
愛犬が健康で長く一緒に過ごせるように、健康管理に気をつけてあげましょう。
心臓病や肝臓病、腎臓病にならないようにするためにもバランスの取れた食事や適度な運動を意識しておきましょう。
この項では、
- 腹水の原因① タンパク質の減少
- 腹水の原因② 全身のうっ血
- 腹水の原因③ 腹腔内の炎症
を解説していきます。
腹水の原因① タンパク質の減少
血液中のタンパク質はアルブミンというものが大半を占めています。
アルブミンは主に肝臓でつくられます。
アルブミンは血液の浸透圧(水分などの液体が移動する時の圧力)を維持する働きや様々な物質と結合したり運搬したりする役割を持っています。
アルブミンが肝臓で作られなくなってしまったり、漏れだしたり、内臓疾患で大量の出血があったりする場合などで減少することがあります。
そうすると浸透圧を保つことができなくなり腹腔へ漏れだしたりすることで腹水が溜まります。
また、肝臓病が原因で低アルブミン血症になり腹水が溜まることもあります。
腹水の原因② 全身のうっ血
うっ血とは静脈の血液の流れが悪くなってしまい滞ることです。
心臓の機能が悪くなったりすると血液循環がうまくできなくなりうっ血状態になることがあります。
そのため、滞った血液の中の余分な水分が保持できる量を超えるため、お腹に染み出てしまい腹水が溜まります。
うっ血による腹水貯留の原因は心臓病や肝臓病によるものが多いです。
心臓や動脈関係では、うっ血性心不全や心臓の弁が生まれつき異形成していたり、何らかの原因で心臓の弁が閉じなくなってしまっていることや拡張型心筋症や心室中隔欠損という心臓の壁に穴が開いている状態、肺動脈狭窄症や肺血管塞栓症、生まれつき閉じるはずの動脈管が閉じていない動脈管開存症、心タンポナーデなどが考えられます。
その他に、間質性肺炎やフィラリア症(犬糸状虫症)、慢性肝炎、肝硬変なども考えられます。
腹水の原因③ 腹腔内の炎症
腹腔内で強い炎症が起こると腹膜にある毛細血管から水分が出てしまい腹水が溜まります。
血液は酸素や栄養を運ぶ他、免疫などを動脈を通って体中の毛細血管へ運んでいます。
腹腔内で炎症が起きた場合に、炎症しているところを治すために免疫などを届けようと多くの体液が毛細血管から染み出し溜まります。
腹腔内の炎症の原因としては腹腔内に達する外傷や腹膜炎、子宮蓄膿症などの感染症や癌によるものなどさまざまで、消化管穿孔(様々な原因で穴があくこと)による細菌感染からの重篤な腹膜炎などです。
胆嚢破裂や膀胱破裂による胆汁の漏出や尿の漏出なども原因になることがあります。
腹水を調べることによって炎症が起きているかどうかわかります。
犬の腹水の症状を紹介
腹水が溜まることによって様々な症状がでます。
愛犬の元気がなかったり、食欲不振になっていたり、息をするのが苦しそうなときがあれば腹水が原因かもしれません。
目に見える症状ではお腹がふっくらしていたりします。
この項では、より詳しく
- 腹水の症状① 犬のお腹が膨らむ
- 腹水の症状② 食欲が低下する
- 腹水の症状③ 呼吸困難に陥る
腹水の症状① 犬のお腹が膨らむ
まず見た目でわかりやすいのが、お腹がふっくらと膨れている状態です。
太ったかな…と思っていても実は病気などが隠れている場合もあります。
目に見えるほどの状態であればかなり病状が進行している場合が多いですので早急に獣医師さんに診てもらうようにしましょう。
お腹が膨らむほどの腹水貯留を起こしている場合は結構な量が溜まっていると考えた方がいいでしょう。
腹水を検査することによって炎症からなのかそうでないのかもわかったりします。
自然に治ると思い放置するのではなくきちんと動物病院で診てもらいましょう。
腹水の症状② 食欲が低下する
腹水によって胃や腸などの消化器官が圧迫されることにより食欲がなくなります。
消化管の動きも妨げることがあるため、うまく消化できずに下痢をおこしたり、便秘になることもあります。
栄養が足りないようになってしまうとフラフラしたり、元気がなくなります。
栄養不足では病気と闘うこともできなくなり一気に衰弱してしまうことがありますので早急な対応が必要です。
愛犬の元気がなかったり、食欲がない場合、腹水が溜まっていなくても動物病院へ連れて行きましょう。
腹水の症状③ 呼吸困難に陥る
腹水が横隔膜や肺、胸腔などを圧迫することによって息がしづらくなることがあります。
呼吸をするときに肺自体が収縮して呼吸をしているのではなく、横隔膜やその周りの筋肉が収縮することによって肺に酸素を取り込んでいます。
横隔膜の下に腹膜があり、そのため腹水が溜まってしまうと横隔膜を圧迫してしまいます。
横隔膜が圧迫されることによって肺を膨らますことができず、酸素も取り込みにくくなるため最悪の場合呼吸困難に陥ります。
犬の腹水の治療法を紹介
愛犬に腹水が溜まってしまったらどのような治療が行われるのでしょうか。
愛犬が痛い思いをするのかなと不安な飼い主さんがいるかもしれません。
この項では、
- 治療法① 利尿剤
- 治療法② 食事
- 治療法③ マッサージ
治療法① 利尿剤
利尿剤を使って体の水分を体外に排出します。
動物病院に連れて行って獣医師さんの判断で利尿剤が処方してもらえるので、飲ませて余分な水分をおしっこから排出するようにします。
利尿作用により体の水分を外に排出することができます。
血液中の水分も減らすことができ、滞っている血液を流れやすくする作用もあります。
そのため、心臓病が原因の腹水貯留の場合に使用されることが多くあります。
しかし、利尿剤はおしっこをつくる腎臓の働きを促すため腎臓に病気がある場合など使用できない場合もあります。
腹水をためないためには根本的な病気の治療が大切になってきます。
治療法② 食事
腸疾患の蛋白漏出性腸症(腸リンパ管拡張症や炎症性腸疾患、消化管にできるリンパ腫など)や腸の炎症が原因による腹水の場合には、低脂肪食、低アレルゲン食で改善する場合があります。
腸リンパ管拡張症は腸のリンパ管が拡張したり破れてしまうことによりリンパ液が漏れ出る疾患です。炎症性腸疾患は原因不明の腸が炎症をおこす疾患です。リンパ腫は血液のがんの一種です。
低脂質食はリンパ管への負担がやわらぎます。また、アレルギーによって腸炎を引き起こしていることもあるので低アレルゲン食を食べさせます。
まずは獣医師さんにどのフードがいいのか、また手作りのご飯を与えている場合はどうすればいいのか相談しましょう。
治療法③ マッサージ
心臓病などで血液循環が悪くなっている状態でむくんだりしている場合はマッサージをすることによって血液循環がよくなるため腹水が改善することがあります。
ただし、愛犬の状態によってはマッサージをしてしまうと逆に状態が悪化してしまうこともありますので、必ず獣医師さんにマッサージをしてもいいか相談・確認をした後に行うようにしましょう。
マッサージは背骨に沿うように腰からお尻までを優しくなでます。
マッサージというと揉むイメージかもしれませんが揉まないようにしましょう。あくまで優しくなでるだけです。
マッサージをする際にはお腹を圧迫したりしないように気をつけましょう。
愛犬が嫌がるようなら無理にしないようにしましょう。
まとめ:犬の腹水は適切な対応で治る病気
腹水が溜まることによってどういうことが起きるのか、また溜まってしまった場合の改善方法をお伝えしてきました。
今回のまとめはこちら!
- 犬の腹水とは、腹腔内に余分な水分がたまること
- 犬の腹水が起きる原因は、病気や炎症が考えられる
- 病気考えられる病気は心臓病、肝臓病など様々
- 犬の腹水の症状はお腹が膨れたり、食欲の低下や呼吸困難
- 治療方法は投薬や食事療法、マッサージ