【獣医師監修】猫の膀胱炎とは?原因から症状、治療法、予防法を解説のサムネイル画像

猫の膀胱炎をご存知ですか?細菌感染や尿路結石を原因に発症し、血尿、頻尿や粗相、排尿時の痛み、歩けない等の症状が出ます。悪化すると腎不全等の腎臓病になることもあります。この記事では猫の膀胱炎について原因から症状、投薬等の治療法、予防法まで詳しく解説します。

記事監修者「森下 浩志」

監修者森下 浩志
フィナンシャルプランナー

早稲田大学基幹理工部出身。すべてのペットのお金と健康にまつわる問題を解決したい、という強い思いからMOFFMEを立ち上げ。ファイナンシャルプランナー、損害保険(ペット保険を含む)の公的資格取得。獣医師団体などと連携をして、ペットのWEB健康診断ツールの開発も行う。

この記事の目次

目次を閉じる

猫の膀胱炎は自然治癒では治らない?フードの管理も完治には大切

ご自分の家族の一員である愛猫。気まぐれでも時折寄り添ってくる姿に、頬が緩むことでしょう。愛猫にはいつまでも元気で長生きしてもらいたいものです。


しかし、猫のかかりやすい病気に「膀胱炎」という病気があります。重症化してから飼い主さんがようやく異常に気付くケースもあります。


猫がかかりやすい病気である以上、飼い主さんが早めに気付いて早期治療へつなげたいものです。


そこで今回「MOFFME」では「猫の膀胱炎」について

  • 猫の膀胱炎の原因、症状、見分け方とは?
  • 猫の膀胱炎を治療するには、その費用はどの位かかるのか?
  • 猫の膀胱炎の予防法とは?
  • 膀胱炎になりやすい猫の種類や年齢・性別とは?
以上を中心に解説していきます。

この記事を読めば、愛猫の膀胱炎の原因や、発症した場合の対処法が良くおわかりになることでしょう。是非、最後までご覧ください。

猫の膀胱炎とは?特徴や原因、症状、見分け方を解説!

猫が膀胱炎になり易いのは、進化の過程で会得した猫ならではの習性が影響しています。そのため、飼い主さんは愛猫の体調や行動の変化を注意深く観察する必要があるでしょう。


こちらでは、

  • そもそも猫の膀胱炎とはどんな病気か?
  • 猫の膀胱炎の検査方法とは?
  • 猫の膀胱炎にはこんな原因がある
  • 気になる猫の膀胱炎の症状
  • 猫下部尿路疾患とは何?

について解説します。

そもそも猫の膀胱炎とは?概要や特徴について解説!

猫の膀胱炎とは、膀胱に炎症が生じ、血尿や頻尿、排尿時の痛み等の症状が見られる病気です。重症化すれば急性腎障害を発症するおそれもあります。


猫の膀胱炎は細菌感染(例:ブドウ球菌・大腸菌等)が原因となって起こる「細菌性膀胱炎」と、はっきりとした原因がわからない「特発性膀胱炎」の2つに分かれます。


猫の膀胱炎は特発性膀胱炎が比較的多いと言われています。原因はよくわからないものの、猫はそもそも砂漠に生息していたことから、水を飲む量がわずかでも生きていけるような身体に進化しました。


つまり猫の場合、尿を濃縮し、残った水分は体内で再利用する仕組みを持っているのです。しかし、この水分を再利用する仕組みで尿が濃縮され、逆に膀胱粘膜を過剰に刺激し膀胱炎となるという指摘もあります。また尿が濃縮され排尿回数が減ると、尿が膀胱内に貯留する時間が長くなって尿結石ができやすくなってしまいます。

猫の膀胱炎の検査方法とは?

膀胱炎には尿検査が重要です。なるべく新しい尿を、何とか液体の状態で動物病院へ持ち込めば、尿検査ができます。


尿検査だけでは診断できませんが、原因を推測したり尿の性状を確認したりします。


ただし、なかなか愛猫の尿をとるのは難しいはずです。飼い主さんが愛猫の異常を感じた場合は、たとえ尿がとれなくても早い段階で動物病院で診察を受けましょう。


またペットシーツをトイレに敷いている場合は、ペットシーツ抜いたり裏返しにしたりすることで尿を採取しやすくなりますので、参考にしてみてください。


猫の腹部のエコー検査レントゲン検査で、膀胱の炎症の度合い、膀胱内の結石の有無や大きさ等について、さらに詳しく調べることができます。

猫の膀胱炎の原因は?細菌感染や結石等、主に3種類ある!

猫が膀胱炎となってしまう原因は、主に細菌感染と膀胱結石(結晶)、そして原因がはっきりわからない特発性の3つがあります。それぞれの膀胱炎に至るプロセスを解説します。


細菌感染

前述したブドウ球菌・大腸菌等によって起こる膀胱炎を「細菌性膀胱炎」と呼びます。糞便などに含まれるこれらの細菌が尿道をつたって膀胱内に侵入することによって引き起こされます。


後述する膀胱結石や結晶によって膀胱粘膜が傷ついてしまうと、二次的に細菌感染することもあります。


結石(結晶)

既にのべた通り猫は尿を濃縮し、身体内で水分が再利用可能な仕組みを進化の過程で会得しました。逆にそれが原因で膀胱結石や結晶が生じやすくなっています。


オスは尿道が細長いため、膀胱にできた結石が尿道に流れると結石がつまりやすいという特徴があります。また、炎症産物が尿路を塞いで尿毒症を引き起こすこともあります。


特発性

猫は単独行動を好む動物です。そのため、多頭飼育のような環境が継続してしまうと、ストレスが溜まってしまいます。


膀胱炎はこのようなストレスの多い環境でも発症しやすい傾向が見られます。ストレスも前述した特発性膀胱炎の要因の一つではないかと指摘されています。

猫の膀胱炎の症状は?血尿や頻尿、歩き方の変化等の症状を解説!

膀胱炎の症状としてまず頻尿があげられます。膀胱炎になると膀胱がうまく伸び縮みできなくなるため、実際膀胱にあまり尿がたまっていなくても尿意を覚えてトイレに行くものの、ほとんど尿が出ない、という状態になります。これが頻尿です。そしてほとんど尿が出ないと残尿感からトイレに行ったり来たりして、落ち着きがなくそわそわします。


しかし、実際の尿の量は少なく、排尿の姿勢を取ってから尿が出るまでやや時間もかかるなら膀胱炎の可能性は高いです。


また、排尿の際に痛みがあるので、尿をするときに痛みで鳴く場合もあります。膀胱炎になると尿が濁ったり血尿が出たりすることもあるので、このような場合にも速やかに動物病院で診察を受けましょう。


そのため、猫の動作はもちろん、尿のチェックもできるだけ行っておきましょう。

補足:猫下部尿路疾患とは?どんな病気が該当するのか

猫下部尿路疾患、なかなか聞き慣れない病名と言えます。別名「FLUTD」ともいわれています。こちらは、膀胱から尿道までの下部尿路で発症する、さまざまな病気・症状の総称です。


猫ではよく尿路結石や特発性膀胱炎、膀胱周辺の腫瘍、尿路感染症等、一つまたは複数の病気が合わさって起こるので、この総称が用いられます。


頻尿や排尿時の痛み、血尿などの症状がみられ、重度の場合は尿毒症をおこし死に至る危険性もあります。


猫下部尿路疾患の治療に共通した特効薬のような物は無く、原因となっている病気をつきとめ、原因に合わせた治療が行われます。

猫の膀胱炎の治療法や治療費用を詳しく解説!

猫の膀胱炎は、悪化すると「急性腎障害」を引き起こすことがあります。急性腎障害になると腎臓の機能が低下して、本来体の外に排出されなければならない老廃物や毒素などが体内に溜まり、嘔吐や体温の低下、痙攣といった深刻な神経症状等を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあります。そのため、膀胱炎とわかったなら速やかな治療が必要となります。


こちらでは、

  • 猫の膀胱炎の治療方法には何があるか?
  • 猫の膀胱炎の治療費はいくら位か?
  • 動物病院へ行くベストなタイミング
について解説します。

猫の膀胱炎の療法食や抗生物質の投与、手術等の治療法を解説!

細菌性膀胱炎と特発性膀胱炎のいずれを発症していたとしても、水分をたくさん摂取し、新鮮な尿を排出させること、原因に対する治療を施すことが基本的な治療法です。


こちらでは、細菌性膀胱炎と特発性膀胱炎の各治療方法についてみてみましょう。


細菌性膀胱炎の治療法

細菌の感染を抑えるため抗生剤が投与されます。

細菌にはさまざまな種類があるため、投薬をしていてもなかなか症状の改善がみられない場合は、細菌培養検査で原因菌の特定をしたり、薬剤感受性試験で投与する抗生剤の種類を決めたりします。

また、膀胱結石が原因となっているならば、投薬の治療と並行し療法食で結石を溶かす方法が試みられます。結石の種類によっては薬や食事で溶けないものもあり、手術で結石を摘出しなければならないこともあります。

また、尿道が詰まっている場合、尿道口からカテーテルを挿入し、つまっているものを流しだす治療が行われます。

カテーテル処置でも尿路の閉塞が解消されなかったりした場合、手術で結石を取り除くことになります。

特発性膀胱炎の治療法

特定の原因が見当たらない以上、カテーテルの挿入や手術は行えません。そのため、対症療法を行います。

例えば、痛みが強い場合は鎮痛剤を使用し、筋肉の強い緊張が原因で排尿に支障がある場合には、排尿を助ける薬物の使用を試みます。

ストレスが原因と推測できるなら、ストレス軽減を目的に抗不安薬やサプリメントなどを使用します。主に薬物療法で猫の反応を見ながら対応していきます。

特発性膀胱炎の場合、ストレスの原因を取り除く、飲水量を増やす、トイレを常に清潔にするなどの方法も同時に行います。

猫の膀胱炎の治療費はどれくらい?治療事例も紹介!

猫の膀胱炎の治療費は通院1回あたり5,000円程度が平均的な目安となっています。しかし、深刻な膀胱結石が原因の膀胱炎ならば、更に高額な費用がかかります。


こちらでは具体的な治療例をあげて、どの位の治療費がかかるか解説しましょう。


(例)

  • 猫種:スコティッシュ・フォールド・2歳
  • 内容:入院9日・手術1回

内容金額
獣医師の診察1,000円
検査21,000円
入院27,000円
注射13,500円
処方2,000円
全身麻酔15,000円
手術50,000円
点滴18,000円
合計147,500円
だいたい15万円程度かかるとみて良いでしょう。やはり手術費用は5万円と最も高額です。ついで入院費(9日分)の2.7万円となります。

補足:動物病院へ行くタイミングはいつ?

血尿等のような、素人がみてもはっきりと異常がわかる状態になっていると、かなり症状が進行している可能性は高いです。


そのため、排尿時の様子がおかしい、または尿が通常より出ていないと感じたら、動物病院へ行きましょう。


たただし、動物病院で定期的に尿検査などの検査をすることで、早期発見・早期治療をすることができます。

猫の膀胱炎の予防法・対策は?餌や飲水量の管理が大切!

愛猫が膀胱炎になったら手厚い治療が必要です。膀胱炎にならないよう予防策をしっかり行うことが大切です。次のような予防法をとり、膀胱炎を未然に防ぎましょう。


日頃から水をよく飲ませる


もちろん無理矢理は禁物ですが、水分をたくさん摂取し、膀胱に長時間尿をためないことが大切です。


濃い尿は膀胱粘膜を刺激するので、水分の摂取で尿を薄め頻繁に排尿させます。こうすれば尿が長い時間、膀胱内に留まらず膀胱炎のリスクを軽減できます。


また、ドライフードを水・ぬるま湯でふやかすことで、水分摂取量を増やすことも可能です。ウェットフードを与えるのも良いでしょう。


ストレスの軽減


ストレスの要因としては前述した多頭飼育の他、トイレの環境、引っ越し、生活パターンの変化、食事が変わった、世帯員の変化等いろいろあります。


特発性膀胱炎の要因がストレスの蓄積によるものと指摘されています。ストレスの原因となる状態を可能な限り取り除くようにしましょう。


トイレは排尿しやすい環境(例:静かで落ち着いたトイレにする等)を整備したり、身を隠すことができる場所を作ったりして、愛猫が穏やかに生活できる環境を提供することも予防策となります。

膀胱炎になりやすい猫種や年齢、性別はある?

猫の品種で膀胱炎にかかりやすい種類はありません。前述したように、普段からあまり水を飲まない猫は、尿が濃縮しやすい傾向があるので気を付けるべきでしょう。


細菌性膀胱炎はメスに、膀胱結石による膀胱炎はオスによくみられます。


膀胱結石による膀胱炎がオスに多い理由としては、去勢の結果として性ホルモンの分泌量が減少し、成長にあわせてペニスが大きくならず、尿道がより細くなってしまうからです。


なお、特発性膀胱炎については若齢~中年の猫で発症率が高いといわれています。

もしもの時に備えてペット保険に加入しておくのがおすすめ!


ペット保険
は愛猫の病気やケガの治療費をサポートする商品です。保険契約は概ね1年毎に自動更新されます。


また、膀胱炎の治療費はペット保険の補償対象内になるので安心してください。事前に加入しておくことで、愛猫のいざという時の治療費を賄うことができます。


ペット保険は契約する際、商品によって補償割合が異なり、多くの商品では50%もしくは70%を補償してくれます。


当然、サポートされる割合が高いならばその分保険料はかかります。その他、猫の年齢等でも保険料に差が出てきます。


他にも、MOFFMEではペット保険に関する記事が数多くあるので、是非参考にしてみて下さい。

ペット保険の一括比較はこちら

まとめ:猫の膀胱炎は治る!異変があれば動物病院へ連れて行こう

猫の膀胱炎の特徴と、その治療法および予防法について解説してきましたが、いかがでしたか。


今回は

  • 猫の膀胱炎は、膀胱に炎症が生じ、血尿や頻尿、排尿時の痛み等の症状が見られる病気
  • 猫の膀胱炎は、「細菌性膀胱炎」「膀胱結石による膀胱炎」「特発性膀胱炎」の3つに分かれる
  • 猫が膀胱炎となってしまう原因は、主に細菌、結石(結晶)、特発性がある
  • 排尿時の様子がおかしい、または尿が通常より出ていないと感じたら、動物病院へ行こう
  • 猫の膀胱炎は水分をたくさん摂取、新鮮な尿を排出させることが基本的な治療法
  • 細菌性膀胱炎は抗生剤が投薬され、必要ならば手術治療等が施される
  • 特発性膀胱炎は主に薬物療法が行われる
でした。

猫は進化の過程で、水分をあまり摂らなくて良いように身体の仕組みが変化していきました。そのため、膀胱炎はやむを得ない病気とも思われます。

しかし、飼い主さんが愛情をかけ、愛猫をよく観察していれば早期の発見につながることでしょう。

膀胱炎を予防するためには、水分を多く摂らせること、愛猫の生活環境を整えストレスの軽減も図ることが大切です。

MOFFMEでは、他にも様々なペットや保険に関する記事を多数公開しておりますので、ぜひご覧ください。