猫の腎不全をご存知ですか?高齢等の原因で腎臓の働きが低下し、嘔吐や下痢、便秘、トイレが多い、動かない等の症状が出ます。悪化した末期状態では死ぬこともあります。治療は点滴や食事療法が行われます。この記事では猫の腎不全について原因から症状、予防法まで解説します。
この記事の目次
目次を閉じる猫の腎不全は回復する?手術等をすれば予後が良くなるのか
- 猫の腎不全とは?特徴・原因・症状を知ろう
- 猫が腎不全になったときの治療法と治療費は?
- 猫が腎不全にならないための予防法
- 腎不全になりやすい猫種・年齢・性別はある?
- 腎不全に備えて入っておきたいペット保険
猫の腎不全とは?特徴や原因、症状について解説!
猫の腎臓病は、猫の年齢が高くなるにつれてかかるリスクが高くなる病気です。
もともと猫は水の少ない地域で生まれた生き物です。少ない水分でも生きていけるように尿を濃縮して排泄しています。
その代償として、歳をとるほどに腎臓への負担も大きくなり、腎不全にかかりやすいのではないかといわれています。
ここでは、
- 腎臓とはどんな臓器?
- 猫の腎不全の種類
- うちの猫は腎不全?検査する方法は?
- 猫が腎不全になる原因
- 猫が腎不全にかかったときに出る症状
そもそも腎臓とは?腎臓の働きについて解説!
腎臓は人間にもある臓器で、一度は耳にしたことがある人がほとんどでしょう。では具体的にはどのような機能を果たしているのでしょうか?
腎臓は主に4つの役割を果たしています。
- 水分を排出・再吸収する
- 老廃物を尿として排泄する
- ミネラルのバランスを調整する
- ホルモンを分泌する
猫の腎不全とは?急性腎不全と慢性腎不全の2種類ある!
猫は水が少なくても生きられるようにできています。そのため腎臓に負担がかかりやすく、高齢になるにつれて腎臓病の罹患リスクが高まります。
猫の腎不全には「急性腎不全(急性腎障害)」と「慢性腎不全(慢性腎臓病)」があります。それぞれ特徴が異なりますので、よく理解しておきましょう。
急性腎不全(急性腎障害)
急性という名の通り、突然腎臓の機能が低下します。進行が速いのが特徴で、数時間から数日程度で腎機能が障害されます。
腎臓に異常が起こるケースもあれば、他の病気が原因になっているケースもあります。
進行が早いので早急な対処が必要です。早急に対処すれば腎機能が回復することもあります。
慢性腎不全(慢性腎臓病)
15歳以上の高齢になった猫の8割以上が罹患していると言われます。
高齢の猫の死因第1位とも言われているので、猫を飼っている人であれば注意しておきたい病気です。
ゆっくりと年月を重ねて腎機能が低下するため、症状に気が付きにくいのが特徴です。症状に気がついたタイミングでは進行が進んでいて、腎臓の大部分が機能しなくなっているようです。
猫の腎不全の検査方法とは?
猫の(慢性)腎不全は、早期発見・早期治療が重要です。つまり、飼っている猫の腎臓の状態を把握しておくことがポイントです。
腎臓の役割は血液中の不要物を尿として排出し、体内環境を整えることでした。つまり血液と尿を検査することで、腎臓の状態を知ることができます。
急性腎不全は未然に防ぐことが難しいですが、慢性腎不全は猫が高齢になるにつれてリスクが高くなります。そこで、7歳を過ぎたら毎年必ずこの2つの検査をすると良いでしょう。
まず尿検査では、腎臓の様子がわかります。具体的には、尿の濃縮力や尿タンパクがあるかどうかをチェックします。
猫の腎不全の原因は?年齢や膀胱炎、膀胱結石等の原因を解説!
猫はそもそも慢性腎臓病になりやすい動物ですが、腎不全になる原因がはっきりと特定されているわけではありません。ただし、急性腎障害か慢性腎臓病かで原因は異なります。
急性腎障害の場合は3つの原因が考えられる
急性腎障害の原因には「腎前性」「腎性」「腎後性」の3種類があり、
- 腎前性:脱水や心疾患などによる循環血液量の低下
- 腎性:中毒や細菌感染
- 腎後性:尿結石や腫瘍などによる尿閉
のようになっています。
慢性腎臓病は原因がわからない
- AIMというタンパク質が猫ではうまく機能していない
- 遺伝
- 急性腎障害に続いて起こる
- 歯周病
- 加齢
猫の腎不全の症状は?嘔吐や下痢、痙攣、痛み等の症状を解説!
では猫が腎不全になった時、どのような症状が現れるのでしょうか。
急性は短い期間で症状が現れる
急性腎障害になると元気や食欲がなくなる、嘔吐、脱水、尿の量が著しく減るなどの症状がみられます。重度の場合は痙攣や体温の低下などの症状がみられ、最悪の場合死に至ることもあります。
数時間から数日の間で急に腎機能が低下するので、猫の様子がおかしいと思ったらすぐに動物病院に連れていきましょう。
慢性は尿の量に注意
慢性腎不全は初期の段階では症状がみられないという特徴があります。水をよく飲み尿の量が増える「多飲多尿」の症状が最初にみられることが多いのですが、この段階ですでに腎機能の75%が失われています。
猫はあまり水を飲みたがりませんので、「最近よく水を飲むな」と感じたら、一度病院に連れていくと良いでしょう。
その後は食欲が無くなり体重も減少していくので、「おかしいな」と感じやすい段階になります。
尿毒症にまで発展すると、嘔吐を繰り返したり痙攣を起こしたりして、死に至ることもあります。
猫の腎不全の治療法や治療費を解説!
猫が長生きすればするほど、かかる危険性が高くなるのが慢性腎臓病です。
猫の死因第一位のこの病気の知識を持っておくことは、猫と長く一緒に暮らしていく上では大切でしょう。
そこで飼い主として知っておきたいのは、「猫が腎不全になったときはどうやって治療するの?」「治療費はいくらくらい必要になるの?」ということでしょう。
今回は、
- 猫の腎不全の治療法
- 治療にかかる費用
- 飼い主ができる看護
猫の腎不全の療法食や投薬等の治療法、治療費を解説!
急性は原因となる病気を治療する
急性腎不全の場合、まずは原因となる病気の治療を行います。
急性は進行度合いによって治療法も変わりますが、さらに点滴や利尿剤の投与などの治療もあわせて行います。
慢性は進行を遅らせる
慢性の腎不全には完治させる治療法がありません。腎臓は一度壊れたらもとに戻らない臓器だからです。そのため、病気の進行を遅くするための治療が行われます。
最も活用されているのが療法食です。リンやナトリウム、タンパク質の摂取量を制限して、腎臓への負担を減らします。
療法食は普通の食事を摂りつづけた猫の約2.3倍ほど長生きするというデータもあるようです。
もちろん投薬や注射などもあります。胃液分泌や尿毒素を抑えたり、尿毒素を便と一緒に排泄するための薬が使われます。
また最近では「セミントラ」や「ラプロス」という猫の慢性腎臓病治療薬(動物用医薬品)があり、そちらが使われることも多いです。
治療費
特に慢性の腎不全は長く付き合う病気になります。そのためかかる治療費も高くなります。
以下はアニコム損保のデータを参考にしたものです。
年間 | 1回あたり | |
---|---|---|
診療にかかる費用 (年間15.2回通院) | 27万2,598円 | 9,329円 |
入院にかかる費用 | 11万9,223円 | 6万9,003円 |
手術にかかる費用 | 29万3,571円 | 26万9,107円 |
ペットの通院・入院・手術は人間のように保険適用がありませんから、1回あたりにかかる金額が大きくなります。
貯金をしておくだけではなく、ペット保険に加入しておくと、安心して治療を受けさせることができます。
猫が腎不全になってしまった時、飼い主ができる看護とは?
まず飼っている猫が急性の腎不全になった場合には、すぐに病院に連れていきます。早急な治療が効果的だからです。
また猫が7歳になったら、定期的な検査をしに動物病院へ行きましょう。最低年に1回くらいの頻度が理想です。病気を早期発見し、治療を受けさせてあげることも飼い主にできることです。
それでも飼っている猫が慢性の腎不全になることもあるでしょう。
長期的に付き合う病気なので無理をし過ぎず、猫が快適に暮らせるように、以下の点に注意すると良いでしょう。
- 猫にストレスがかからない環境にする
- 新鮮な水を常時用意して、可能な限り水を飲ませる
- 療法食を食べさせる
猫の腎不全の予防法とは?
猫の慢性腎臓病はいまだにはっきりとした原因が特定されているわけではありません。しかし、いくつか慢性腎臓病を引き起こす要因があります。
その要因に気をつけて猫を飼うことが、猫の腎不全を予防することにつながります。
そこでここでは、猫の腎不全を予防するために飼い主が日常で取り組める予防法を解説します。
最も効果的な予防法は食事管理です。
今日からでも始められるものなので、猫を飼っている人はぜひ取り入れてみてくださいね。
猫の腎不全の予防法は?水を飲ませる、食事管理等の予防法を解説
腎臓の役割は血中の余分なものを取り除いて尿として排出することでした。そのため、血液中に余分なものが増えると腎臓に負荷がかかります。
また猫は水をそこまで摂らなくても生きていけますが、そうすると血液の量が減ります。すると腎臓にも負担がかかりますし、尿の量も少なくなるので、尿路結石などになり急性腎不全になる可能性も高くなります。
そこでまずは腎臓の負担を減らすために、水をしっかり飲ませましょう。猫はあまり水を飲みません。そのため、新鮮な水を家庭内の複数箇所に置いておきましょう。
また塩分が高い食事はおすすめでません。塩分の高い食事は腎臓に大きな負担をかけます。
猫にとって一番良いのは、総合栄養食であるキャットフードです。おやつも与えすぎると腎臓に負担がかかるので、避けましょう。
補足:手作りの餌等、塩分の多い食事を与え続けるのは良くない
大好きな猫ちゃんに手作りの餌を作ってあげたい、と思う飼い主さんもいらっしゃるでしょう。手作り食に関しては、手作りする際は加工品や調味料、ミネラルやタンパク質の摂り過ぎに気をつけるようにしてください。
人間のための食材は、猫にとっては塩分過多になっていることがほとんとです。
そのため、手作りの餌や塩分の高い人間用の食べ物を与え続けることは腎不全を引き起こしかねません。
- 手作りの餌
- 竹輪やカニカマといった練り物
- 煮干しやジャーキー(ペット用もNG)
- 刺身
また、手作りの餌や人間用の食べ物を長い間食べていると、猫本来の味覚が損なわれます。すると、いざ腎不全になってしまったときに、塩分控えめになっている療法食を食べなくなります。
腎不全になりやすい猫種や年齢、性別はある?
猫は年齢を重ねるほど慢性腎臓病になる危険性が高くなります。15歳以上の猫であれば80%以上がかかっているとも言われているので、飼い主としては飼っている猫が慢性腎臓病になる可能性があることをよく理解しておくことが大切です。
とはいえ、腎不全になりにくいまたはなりやすい猫腫・年齢・性別があるのかどうか、気になりますよね。
結論から言えば、性別によるかかりやすさ・かかりにくさはありません。ただし年齢面は大きく関係していて、7歳以上になると罹患率が高くなります。
また猫腫によるかかりやすさ・かかりにくさについてですが、シャムやアビシニアン、ロシアンブルー、ペルシャなどの品種は家族性腎症といわれていて、他の猫の2倍以上慢性腎臓病にかかりやすいですので注意が必要です。
もしもの時に備えてペット保険に加入しておくのがおすすめ!
このように、猫と腎不全は切っても切れない関係性にあります。特に猫の寿命も伸びているので、ますます腎不全にかかるリスクが高くなっていると言えるでしょう。
特に慢性腎不全は完治することがありません。そのため、長期的な通院が必要になります。
例えば10歳の時に慢性腎不全になった場合、平均寿命の15歳までを考えれば5年間治療をし続ける必要があります。
年間でかかる診療費が27万2,598円なので、5年間にかかる治療費は
27万2,598円×5年間=136万2,990円
です。
ペットの治療には保険が適用されないので、全て実費で支払うことになります。愛する猫ちゃんの健康のためとはいえ、経済的負担は大きいですよね。
そこで検討しておきたいのがペット保険です。ペット保険に加入しておけば腎不全はもちろんその他のケガや病気にも対応できるので、万が一の時でも安心して治療することができます。
MOFFMEではペット保険の選び方やペット保険に関する様々な記事を掲載しているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
まとめ:猫の腎不全とは?異変があれば動物病院へ連れて行こう
今回は猫の腎不全について原因や治療法・予防法などを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
この記事のポイントは
- 猫は水の少ない地域の生き物なので水が少なくても生きていける分、腎臓に負担がかかりやすく、腎臓病になりやすい
- 高齢になった猫の80%以上がかかっているとも言われている
- (慢性)腎臓病は完治しないので、長期的な治療が必要になる
- 腎臓病を予防するためには水を飲ませて、塩分の少ないキャットフードを規則正しく食べさせることが有効
- 万が一の時に安心して治療できるように、ペット保険に加入しておくと安心